文楽2本~「鑓の権左重帷子」~

芸能史の大谷津です。

今年は、文楽を2本見ました。7月に「鑓の権左重帷子(やりのごんざかさねかたびら)」11月に「奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)」

いずれも大阪の国立文楽劇場にて、です。大阪で見るときはいつも前もって計画をしてというより、出張や所用で大阪近辺に行った合間に、ということが多いです。時間がとれればラッキー!喜び勇んでチケット予約すると、これが、2、3日前、もしくは当日でも1、2、3列目辺りの良いお席をとれるんですよ、うれしいことに!
東京の国立劇場小劇場に較べて、劇場も広く席数も多いし、ね。
予約も広さも…東京とは違うこのゆったり感が私は好きで、最近文楽は専ら大阪です。上演演目も東京には来ないものもあります。この2本も大阪のみの上演でした。

 

近松門左衛門作「鑓の権左重帷子」は享保2年(1717)8月竹本座初演で、近松最晩年の姦通劇。夫も子もある松江藩の茶道の師匠の妻おさゐが、娘の婿にと考えていたイケメン表小姓笹野権三と密通、というか、実はそうではないのにそういう形になってしまい、夫に二人とも討たれる、という話です(ワタシが説明すると俗っぽいなあ)。
大学生の頃初めて作品を読んだ時、江戸時代の話なのにその現代性、リアリティに圧倒されたのを覚えています。この作品の背景には実際の姦通事件があり、歌舞伎や浮世草子にもなっています。そうそう、現代になっても映画化、舞台化されてましたね。郷ひろみと岩下志麻の映画、見に行ったっけ…
学生の頃は何で姦通した事実もないのに濡れ衣を着せられたまま、二人討たれていくのか、なんで~???と、全く分からなかった。すなわち、作品の良さが??わからなかったのです。「茶道史」ご担当の谷村先生とお話ししたら、授業で「鑓の権左重帷子」のお話をなさるとか。やはり、学生はわからない~???というんですって。だよね~。

あれから30年…100%わかる!とはいかないまでもなんかそういうのあるかもね~くらいには共感できるようになりました(笑)今回はむしろ、作品としてすごいと。姦通でも下品にならず無駄なく真実を描いているがゆえに数百年の時を経ても新鮮で現代的なのではないか、あらためて深い感動を覚えた舞台でした。

 

次の記事では「奥州安達原」をご紹介します!! 😀