こんにちは、歴文1年のAとIです。今回は、昨年10月17日に文化財保存学の授業の中で行われた上田ターニャさんの講演について紹介します!
上田さんは、アメリカ・ボストンにあるボストン美術館(Museum of Fine Arts、略称MFA)において修復のお仕事をされています。MFAでは明治時代に岡倉天心がアジア部門の部長を務めていたため日本の美術品が多く収蔵されていて、またアメリカ最古の東洋美術修復所があります。
私たちは、この夏にボストン・サマーセッションに参加し、その際田中先生と一緒にMFAなどを見てまわり、お話を聞かせていただく機会に恵まれました。MFAでは美術品修復の様子が一般の見学者にもガラス越しに公開されています。こういった試みはまだ日本ではあまり行われておらず、とても面白い試みだと感じました。
↑夏にMFAでみた”Conservation in Action”の展示。仏像(左)と油絵(右)を公開修復していました。
今回の日本での上田さんの授業では、MFAのなりたち、Conservation and Collection Managementの組織について、そしてそこでどのようなお仕事をされているかなど、詳しく伺うことが出来ました!
MFAには、7つの工房があります。
1.アジア絵画、浮世絵版画
2.家具、額、楽器
3.立体修復
4.西洋絵画(油絵)
5.紙本修復、写真
6.染織品や衣装
7.分析部(年代測定など)
その他所蔵品を管理する部門や、5万点程ある版画を額に入れる職員、立体物を収納・固定する職員がいます。
その中でも私たちが特に興味を持った部門はアジア絵画です!MFAのアジア絵画の工房では、主に日本絵画や中国絵画を取り扱っています。
日本絵画の工房は、日本の工房と全く同じ作りになっており、畳敷きの部屋に低い机を使って作業しています。外国の方が日本人のように正座をして緻密な作業をしている姿がとても印象的でした!一方、中国絵画は主に立って作業を行います。大きな作品が多いため、修復にはかなりの時間を要します。あまりにも大きい作品はギャラリー内で修復することもあり、その様子を間近に見学することが出来ます!
実際に見学者の方には人気なのですが、多くの人に見られながら作業するため当初は職人さんが嫌がることが多かったそうです(笑)。MFAではこうした修復作業の展示化が早くから行われていて、修理中の作品の全体像が分かるように壁に飾ってあったり、X線写真等の中身が見えている写真を説明文と共に掲示してあったりと工夫が凝らされています。
アジア絵画の修復は他の分野に比べて認知度が低く、工房はかなり少ないそうです。上田さんのお話では、現在後継者の育成に力を入れており、インターンシップなどを通じアメリカ人学生を増やしたいとのことでした。MFAのスタッフの方々の活動はもとより、このブログを通してアジア絵画修復のことを皆さんに知って頂けたら幸いです。上田さん、ご講演頂きまして本当にありがとうございました。