特殊研究講座が開催されました

みなさん、こんにちは。日本近世史ゼミ3年のM.IとM.Hです。
2022年10月12日(水)に開催された、歴史文化学科の特殊研究講座についてご紹介します。

今回は、学習院大学名誉教授の高埜利彦先生をお招きし、「近世史研究とアーカイブズ学」という演題で、講演をしていただきました。

前半では、先生の編書である『近世史講義-女性の力を問い直す』の内容にも触れながら、女性の力を通して近世史を紐解く試みについて講義していただきました。

江戸時代は、身分・階層の秩序が固定化する中で、個性をもった女性たちは確かに存在していました。女人禁制だった富士山へ初めて登頂した不仁道の女性たちのお話ややはり相撲における女人禁制についてなど、大変興味深いお話をして下さいました。

江戸時代の後期になると、幕府はあるべき「国民」像として、全国の善行者をまとめた『官版 孝義録』を刊行しました。そこには、父母に「孝行」する者や「貞節」な女性、「奇特」な名主などがまとめられており、これにより武家の女性のみならず庶民の女性にまで家長の支配権を絶対とする女としての貞操が求められるようになり、明治以降も共通の女性像として継承されていきました。
その後、敗戦後の民主化が進む中で徐々に女性たちは解放され、現在ではジェンダーフリーの方向性がしめされており、女性の主体性が問われています。

現在、江戸時代の女性については研究が遅れており、かつ教科書に反映もされておらず、歴史認識として共有されていないことから、イメージしにくくなっています。この原因について高埜先生は、江戸時代の史料は大量にあるにもかかわらず歴史研究者の問題意識が希薄であり、女性を描こうとする観点が乏しかったことを指摘されています。

今後、歴史を考えるうえで女性の力にも着目し、史料を分析・研究していくことも重要だとお話下さいました。

後半では、江戸時代以降のアーカイブズ学の歴史と今後の展望に関して講義していただきました。

アーカイブとは、様々な記録資料(行政資料、歴史資料、フィルムや漫画の原画なども含む)をまとめることです。
そしてアーカイブズ学は、その手法や制度などを学び、後世に遺していくにはどうすべきかを考えていく学問です。

江戸時代の村では、村人の権利を守るための証拠として様々な文書が作成・管理されていました。
しかし近代に入り、武家が中心の幕藩体制から平安時代までのような天皇を中心とした中央集権国家に変わると、これまで大切に保管されていた文書たちが平気で捨てられるようになってしまいます。

その背景には、20世紀初頭から終戦直後にかけて人々が自由に学び、考えることを禁じ、誰もが全く同じ歴史や思想を学ぶことを強制させた「帝国主義」や「皇国史観」が重視されたことや、戦争に関する「機密書類」を隠蔽したい日本の軍隊や政府の思惑などがありました。

このように近代に入ってから粗末に扱われてきた日本のアーカイブズですが、近年では徐々に再認識されつつあります。
日本よりもずっと前から近代的なアーカイブズの制度が整っている先進国に学び、システムや法の整備、アーキビストの育成などを実施するようになりました。
アーキビストの育成に関しては、昭和女子大学も今年度から実施しています。

アーカイブズ学を学ぶことで、社会人として、そして日本に住む市民としてその知識を活用して行ってほしいと、高埜先生は仰っていました。

歴史や文化を学ぶことは一見現代を生きる私たちにとって意味のないことのようですが、実際はそうではありません。
学ぶことによって従来とは違った視点で物事を見ることができたり、新たな発想が生まれたりするのだと思います。
そういったことを今回の講演を通して改めて実感しました。

高埜先生、この度は本当にありがとうございました!