6月23日(日)に八王子車人形西川古柳座で行われた「八王子車人形【国・重要無形民俗文化財】定期公演」観劇後に行われたインタビューのつづきをお送りします!
前回の記事はこちら→ 【次世代継承PJ】八王子車人形 西川古柳座の定期公演を観劇しました~その①~
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―他の団体さんでも修行されていたとお聞きしました。他の団体さんではどのようなご経験をされましたか?
「淡路人形座さんというところだったのですけれども、そこでは1年間修行させていただいて、足使いを徹底的に教えていただきました。基本的に足を覚えると、どこにどう人形が動くかというのことを把握できるんですね。そうすると、車人形でもそれを活かすことができるので、足使いを徹底的に教えていただきました。」
―淡路さんと車人形は動かし方などに違いがあると思いますが、そのギャップで困難なことや驚いたことはありましたか?
「関西の人形はとにかく大きくて、重さも何十キロもあるんです。『戎舞』っていう人形は、足を1歩前に出すだけでも重労働なのがすごくびっくりしました。でも「かしら」とこの胴体の動きは、三人遣いと全く一緒ですので、淡路さんの肩の動かし方、色気の出し方を車人形に落とし込めたというのが今すごく出来ていますね。
あとは、同じ演目なんですけど、間が違ったり、ふりが違ったりと、全く違う動きなんですよ。座によって色んな振りがあるのだなっていうのが改めて分かったのでちょっと困りましたね。」
―他の座の演目をみて、学んだり、取り入れたいなと感じることはありますか?
「もちろん、ありますね。車人形で表現できるのってすごく幅が狭いんですよ。三人遣いでは左手で表現できることが、こちらでは弓手(人形の左手のこと。八王子車人形では人形遣いの右手で人形の右手と人形の左手に付けられた紐を操作します。)があって出来ないので。だから「かしら」と右手だけで、淡路人形座さんで表現していることで、ここが美しいなと思ったところは車人形でも取り入れて、左手で表現できないとこはこうカバーできるなというふうに弓手で色気を、お客さんに弓手を使っているなという違和感を感じさせない演技の仕方が、淡路さんを見て学べたかなと思います。」
―修行に行かれると色んな学びがあるのですね
「そうですね、もう一から学びというか、感性が全く違うので。淡路さんの価値観の、色気の出し方、かっこいい使い方というのが全く違ったので、そこを車人形にも出来れば、伝えていけたらと思います。これはかっこいいと感じたから車人形にも取り入れようと思ったものを、次の若い世代にも伝えていってどんどんより良い技術が磨けられる座になったらいいかなと思いますね。」
―継承問題についてどう捉えていますか
「そうですね、今若い人たちが人形浄瑠璃を見たら日本語ですが、何を言っているのか正直よく分からないと思います。僕たちはそれが悔しいと思いまして、今定期公演でやっている東海道中は現代語が多く、若い人にもわかりやすい演目です。地元の方に知ってもらい身近なものに、いつでも安い値段で身近な時に軽い足取りで来てもらえるような伝統芸能を目標に定期公演は始めました。今は座の中で9名が若手です。若手を採り入れるためには、演目は現代語が多いものにして、お客様とのコミュニケーションが大事だと思います。学校での体験を実施して、人形浄瑠璃を知ってもらい、子どもたちに楽しいという感情を教えたいですね。見る側も演じる側も楽しいことを若い世代に伝えることで、お客様になってくれたり、将来の座員に繋がると思います。」
―具体的な目標設定はありますか
「そうですね、特に大きい目標はないのですが、現在の状況がずっと続くと良いと思っています。できることをコツコツと行い現状維持できれば十分だと思います。あとは若手が増えてくれるといいかなと思いますし、若いうちに芸事に触れて、基礎を学び土台を作る。そうして、技術力の高い人形座ができたらなと思います。」
―年齢層はどのようになっていますか
「一番上で家元が70歳で一番下が10歳で、今ちょうど間がいない状態ですね。僕が20代なので、若手が10代から30代で、今のベテラン組が50代から70代ですので、ちょうど間がいない状態ですね。そこがちょっとネックなんですけど。」
―年齢差が広いからこそコミュニケーションや交流の仕方で工夫していることはありますか
「いやそんなことは全然ないです。向こうの人たちが僕たちに合わせて話を振ってくださるので。そこに惹かれて僕は古柳座に入団したのもありますし、あまり年齢を感じさせない暖かい雰囲気ですね。皆さんあまり喋らない口下手なんですけど。それでも喋ったらすごく楽しいですね。僕もあまりコミュニケーションすごいすっごい苦手ですけど、でも、それでも暖かく向かい入れていただいたので。そういった環境に僕は惹かれて入座しました。」
―モチベーションを保つ方法はありますか
「それでもやっぱり何回もやめたくなる時はありましたけど、そういった時に動画とか見返したら、やっぱりかっこいいんですよ。人形使っている人って。三人遣いとかもちろんそうですし一人遣いもそうですし。自分が陰なのに陰であるが故のかっこよさっていうのがすごくあると感じます。」
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西川柳玉さんインタビューにお答えいただきありがとうございました。
西川古柳座のみなさんご協力ありがとうございました。
更なるご活躍をお祈りしております。