平成27年度FDサロン報告(平成27年7月8日実施)

日 時:平成27年7月8日(水)15:00~16:00
場 所:学園本部館3階 会議室 
メインテーマ:「本学教員の実際の授業から学ぶ」
 第1グループ 「アクティブラーニングとピアラーニング ~学習時間増加と理解定着へ向けての試み~」
  講師:井原奉明教務部長(英語コミュニケーション学科教授)
  参加人数:33名 
 第2グループ:「遠隔授業の取り組み」
  講師:フスレ准教授(国際学科)
  参加人数:12名

(第1グループ報告書)
4月に開催した本年度第1回のFD講演会に続き井原奉明教授に講師をお願いし、アクティブラーニングとピアラーニングの実施例を通して意見交換を行った。
まず前半は井原教授による実施例の紹介が行われた。ウォーミングアップ・導入、ミニ講義+要約、プリント・グループ学習という授業の流れについての概略説明の後、ご自身の授業の様子を動画にて紹介いただいた。その後、授業の問題点とその対応・今後の改善策についてのコメントおよび学生へのアンケート結果の報告があり、後半の時間はそれらを受けて参加者とのディスカッションが行われた。
ディスカッションについては、井原教授から3点のトピックが提供され、それらに基づいて意見交換を行った。参加者から出された主な意見・質問は以下のとおりである。
(1)グループ学習における役割の固定化(教える側・教わる側の学生の固定化の是非)
・役割分担については自然に任せてよいのではないかと思う。
・実際に役割を替える試みをしたことがある。明らかに実力不足の学生をファシリテーターにした際は失敗感があった。ファシリテーターにとなった学生からはつらい思いが感じとられ、そのグループにあたった他の学生からは物足りなく思っている様子が感じられた。(井原)
・役割を固定化すると予習してくる学生はいつも教える側になり、教わる側が予習をせず手抜きをして授業に臨む可能性が出てくる。(井原)
・ファシリテーターとなる学生が固定化されていても問題はないのではないか。
・発言しないことが参加していないことでなく、リスニングすることで理解が深められればそれも役割を果たしていることになるのではないか。
・デザイン系のグループワークでは全員参加型の学習形態を心がけている。
・グループ学習の役割が固定化することはやむを得ないと考えている。グループワークの目的によっても役割を替えるかどうかは異なると思われる。(例:プロジェクト学習の場合、授業の場合)

(2)アクティブラーニングの情報提供量(アクティブラーニングは講義より情報量が落ちることへの対応、どの様な授業がアクティブラーニングに向いているのか。)
→座席の近い参加者同士の数分間の話合いの後、それらの結果を含めて意見交換がなされた。
・講義とアクティブラーニングの時間配分の工夫が必要なのではないだろうか。
・(周囲の先生方との話し合いで)アクティブラーニングを取り入れやすい学科や授業内容があるという認識をした。
・グループ学習をしている学生の判断内容が誤っていた場合、どのように対応すべきか。
・話合いのプロセスは必ずメモをとるようにさせている。方向がずれている場合、このままでは回答に向かえないと思われる場合は「このままだと答えにたどりつけないかも・・・」という程度で指示をしている。(井原)
・学習のクロージングをどのような形にするかが重要である。学生が作ってきたPowerpointを用いてもう一度教員が説明するということを行い、その中で必要に応じて修正しながら説明を行った。
・発表者学生同士で修正ポイントに気づくこともある。他のグループの意見によって修正がきくこともある。(井原)
・学生に対して間違ってもよいというシステムをつくることが重要である。

■参加者の先生方からの質問をもとにディスカッションを行いたい。(井原)
アクティブラーニングに適した人数について
→座席の近い参加者同士の数分間の話合いの後、それらの結果を含めて意見交換がなされた。
・200人規模の授業で、6人ほどで20〜30のグループに分けてグループ学習を行っている。内容は合っているが、人数の規模は合っていないと感じている。
・学科の特性から資格対応科目が多くアクティブラーニングの導入が難しい。ただし実験実習系の科目では4人ぐらいのグループ学習が効率がよいと思われる。
・アクティブラーニング導入の目的は学習時間を増やし目的をもって学習させるプロセスを身につけさせることである。普通教室で60人の規模は周りの音声が気になるなど集中できない。40人程度が適切と考える。(アクティブラーニングの導入には)設備や環境の整備も必要である。(井原)

(3)視覚教材の「権威性」(Powerpointや配布物が教員側による正解の提示と思われてしまうことの是非)→このテーマについては時間の関係上、ディスカッションが行われなかった。

1時間という限られた時間ではあったが、様々な学科の教員が参加し活発に意見交換を行うことができたと思われる。

(第2グループ報告書)
第2グループには参加者12名が集い、フスレ准教授からグローバル人材育成プロジェクトの一環として実施されてきた諸外国との遠隔授業(同期型かつ集合型)の成果と課題について報告がなされた。本学で本格的に遠隔授業が実施されるようになってから2年が経過したということもあり、その間に蓄積されたノウハウをはじめ、授業の様子や担当教員の評価、受講学生の反応・評価などが紹介された。
遠隔授業を実施することによる教育効果は、例えば、①直接当事者国の教員の「声」をその国の言語で聞くことによる内容理解の多角化・深化と言語習得の促進、②授業における臨場感や緊張感の醸成と維持、③授業内容への興味・関心の向上、などが挙げられる。総じて学生にとって非常にいい刺激になっていることが読み取れたという。一方で、実施上の課題として、①時差への対応、②1コマあたりの時間の違いや時間割の調整の困難さ、②各大学が異なるレベル(年式や性能など)のシステムを備えている場合に多発するトラブル、③著作権やプライバシーの問題、などがあるとされた。参加者からは、「国際的にシステムを統一しようとする動きはあるのか?」「アジア諸国と違いボストンとは時差が大きいため、どうすればいいか?」「謝金はどのようにしているのか?」などという質問が出され、フスレ准教授からそれぞれについてアドバイスがあった。
本学の場合、国内外の大学との遠隔授業を行う条件はすでに備えているため、今後、各学科の授業で遠隔授業が活用され、さらに展開していくことが予想される。その際、制度や体制の整備による大学間協議の充実やシステムの整備はもちろん重要だが、「言葉の壁より、どのように教えるか、どのように学ぶか、すなわち、教え方と学び方の改善がより重要ではないかと思われる」というフスレ准教授のご指摘を忘れてはいけないと感じさせるサロンであった。

FDサロンアンケート集計