研修報告【社会調査研修2024】京都 (2) 近代の文化に触れられる2つの施設を見学

4回に分けてお伝えする2024年度社会調査研修、今回は2回目の投稿です。

前回の投稿は、研修報告【社会調査研修2024】京都 (1) 非公開文化財で皇室ゆかりの文化を体感 を是非ご覧ください!

オープンキャンパスでも報告書の展示を予定しています。次回オープンキャンパスは6月22日です。ご来場をお待ちしております!

【石村亭】(非公開)
文豪・谷崎潤一郎が暮らし、名作「夢の浮橋」の舞台にもなった邸宅です。当時の趣や佇まいは変えず、そのままの状態で民間企業によって管理されています。
一般公開はしていませんが、文学や建築等の研究のために社会貢献活動をされており、今回は大学の研修として企業の方に特別にご案内いただきました。
日本の建築様式や豪華な日本庭園、谷崎が数々の名作を生み出した書斎や筆跡などを見ることができ、貴重な機会となりました。

【おもちゃ映画ミュージアム】
京都研修2日目の最初に訪れた“おもちゃ映画ミュージアム”は、歴史的価値のある映画フィルムの発掘・修復を通じて、かつての映画文化を次世代に伝える取り組みを行っている映画の博物館です。様々なイベントや講演会なども開催されています。
古民家をリノベーションした館内には、日本の物だけでなく外国製の古いカメラや手回し映写機やブリキ製の玩具映写機などが展示されており、ポスターなどがずらりと並んでいました。またそれらを実際に手を触れて動かすことができ、他の博物館ではなかなかない体験ができます。
館長の太田米男氏の講話を聞き、無声映画やデジタル化されたおもちゃ映画を鑑賞させていただきました。初期の映画フィルムは無声で弁士が語っていたことや、映画初期の投影の仕組みや当時の状況を学び、映画史に触れることができました。

館内の様子(左) ゾートロープ(中央) 映写機(右)

館長から、日本の映画の歴史や成り立ち、おもちゃ映画ミュージアム開館の趣旨についての説明を受け、当時の京都の社会情勢や昔の京都の街並みの映像を記録している貴重な映像を見ることができました。また、今はほとんど残っていない二分程度の玩具映画を見ることができました。このころの映画のフィルムは可燃性フィルムであったため震災や戦争によって焼失してしまったものや、フィルムの保存が行き届いていなく劣化してしまったものなどが多いため、今残っているものはたいへん貴重な映像でした。おもちゃ映画ミュージアムでは取り扱いの難しいフィルムの保存や劣化したフィルムの修復などにも積極的に取り組んでいます。

また、ミュージアムの中を見学したときに見せていただいたアナログでレトロなおもちゃや機材などの説明を受けました。昔は試行錯誤して絵を動かすための玩具などがありましたが、今ではスマートフォンひとつでなんでもできるようになってしまい、昔の技術や考えがどんどん失われてしまっていることを知りました。今の技術では再現ができないものなどもあります。ミュージアムの中には今までの日本の映画の歴史などが詰まっていて、昔の物から学べることがたくさんあるのだと理解できました。昔からの歴史ある資料を保存していくためには解決していかなくてはいけない課題が多くあることを学びました。昔のことをじかに触れて体験するという機会はとても貴重なものです。昔を知ることができなくなってしまうことは今までの知識や知恵を失ってしまうことと同じことなのかもしれないと考えます。おもちゃ映画ミュージアムのような、昔の知恵を感じられるような場所を残していくことの大切さが、貴重な体験から知ることができました。

京都市のありのままの姿を後世に伝える「京都ニュース」は、戦後の京都の情景や暮らしぶりを記録した貴重なフィルムで、太田館長が発掘や修復も手がけられ、このミュージアムで保存されています。当時の文化や人々の生活を知るうえで重要な資料ですが、保存には多くの困難が伴います。館長からは「こうした活動を維持していくためには、行政の関与や支援が重要ではないか」という話があり、映画文化や歴史の保存には行政や地域全体の協力が必要であり、大きな課題だということが分かりました。

館長からの講話を聴講(左) おもちゃ映画ミュージアム(2024年8月)(右)

(樹所)

次回は、オーバーツーリズムの実態把握のために行った、バス停での実地調査を報告します!