社会調査研修では、その成果を対外発表することを求めています。2024年度のプログラムでは、その発表先として地理情報システム学会(GIS学会)とCSIS DAYSという2つの研究発表大会を選びました。あくまで教育事例の報告という内容でしたが、大学院生の発表者に混じってのプレゼンは良い刺激になりました。
【GIS学会での発表】
バス停調査の成果発表の一環として、2024年10月26日に京都大学宇治キャンパスで行われたGIS学会(第33回地理情報システム学会学術研究発表大会)で口頭発表を行いました。現地研修での結果のみならず、事前学習で学んだ京都市のバス混雑に関する知識や、事後学習から得た考察をもとに、論文をまとめ、口頭発表に挑みました。実際に調査したものを論文にまとめるという作業はこれまで経験したことがなかったため、非常に大変でしたが、メンバーで協力して原稿を書き、先生方からいただいたご指導を参考にして論文を完成させることができました。現代教養学科では、全員が卒業論文を執筆するため、この経験を活かしたいと思います。
京都大学には担当メンバーから代表として2名が赴き、発表を行いました。同じ会場では建築や情報システムを専門として学ぶ他大学の学生の発表も聞くことができ、多くの刺激を受けました。同時に自分たちの調査、発表には何が不足しているのか客観的に把握することにつながり、非常に有意義な時間になりました。
私たちの発表にも様々なご意見、ご質問をいただきました。今回の調査では、バス停での待ち人数を目視および手動で数えました。そのような調査に対して、定点観測カメラを使用して機械的な画像認識を適用することで効率よく調査ができるのではないかというご意見をいただきました。これまでの私たちには「自らの目で見て調査する」という以外の方法は思いも及ばなかったので、非常に参考になりました。また、研修期間中に訪問した京都府立大の関口先生からは、「バス停での待ち人数だけではなく狭い歩道などでの待ち方、並び方による通行人への影響」に考慮すべきではないかというご意見もいただきました。
私たちの作成した論文原稿は、GIS学会「若手分科会」のサイトからご覧いただけます。学生フリーテーマ発表会2024へ進み、要旨集PDFを開いてください。
https://sites.google.com/view/gisa-wakate/session

(開原・諏訪)
【CSIS DAYSでの発表】
2024年11月16日には、東京大学柏キャンパスにて開催されたCSIS DAYS 2024で発表を行いました。CSIS DAYSは東京大学空間情報科学研究センターが主催する研究発表会で、各発表者は単独5分間の口頭発表と、合同での45分間のポスター発表の機会を与えられます。
口頭発表では質疑の時間はありませんでしたが、ポスター展示での質疑が印象に残っています。
私たちのポスター展示のところにも多くのご来場者が立ち寄ってくださいました。その方々からのご質問の中に「京都では最初の観光場所として清水寺へ行く人が多い。どうしたら最初に清水寺へ行くというパターンを減らすことができるのか」というものがありました。
私たちが調査した京都駅前のバス停では、清水寺への移動に際して、バスだけではなく、地下鉄とバスを組み合わせた経路への誘導を図るポスターを見かけました。また祇園や清水寺へ向かうバスのりばの混雜が特に激しかったため、京都駅前からの観光客の移動が清水寺方面へ集中していることが読み取れました。
私たちの調査では、一つの時間帯しか調べられていませんが、事前学習では観光客の空間的だけではなく時間的な分散も重要だと考えられたため、京都駅前からバスで移動できる他の観光地との比較をもとに、訪問の順番を議論する応用可能性の発見につながりました。
京都のバスは、観光客が主に利用する一日乗車券での乗り降りの際、運転士に呈示するだけなので、ICカードと違って詳しい利用区間や人数のデータが取れません。そのため、清水寺へ行く人が集中しているという課題も、バスの利用実態把握という面では今回のような現地調査も有効です。今後の展望としては、さまざまなバス停で系統ごとの利用人数を時間帯別に把握することで、京都観光のルートについての解明につながるのではないでしょうか。
(片桐)
以上、4回にわたり、私たちの「社会調査研修」での成果をご報告いたしました。(2)の記事でも紹介した冊子は、ウェブ公開できない写真もあるため、ここに掲載することはできませんが、オープンキャンパスにお越しいただければ、現物をお手に取ってご覧いただけます。ぜひ、昭和女子大学のオープンキャンパスにも足をお運びください。
オープンキャンパスはこのあと6月22日です!
これまでの投稿は、こちらからご覧ください。
研修報告【社会調査研修2024】京都 (1) 非公開文化財で皇室ゆかりの文化を体感
研修報告【社会調査研修2024】京都 (2) 近代の文化に触れられる2つの施設を見学
研修報告【社会調査研修2024】京都 (3) バス停での実地調査で混雑実態を把握