お久しぶりです!前回の調査編に引き続き、現代教養学科2年の平山と内山がお送りします!
本記事では、私たちが受講している「未来技術と人間社会」という授業で行った現地調査の分析結果についてご紹介します。昭和女子大学周辺地域を対象にした現地調査で収集したデータから、地域の特徴を見つけ、グループメンバーと分析を行いました。
私たちは現地調査を進めている中で、電柱への落書きが著しく多い地域が存在していることに興味を持ちました。そこで、グループメンバーが持っていた「落書きの多い地域は治安が悪い」という印象を出発点にして、治安と落書きとの関係を調査しました。

※黄色の電柱が落書きあり
具体的には、フィールドワークにて収集したデータをQGISに取り込み、分析を行いました。QGISは、オープンソースの地理情報システム(GIS)であり、地図の作成やデータの編集の機能を無料で使用することができます。
図1のように、QGIS上で電柱データを落書きの有無で色分けしてみると、落書きのある電柱(黄色)がいくつかの場所に集中して分布している傾向が読み取れました。
しかし、これはあくまで感覚的なものです。それでは、このことを定量的に説明するためには、どうすれば良いでしょうか。私たちはこの疑問をもとに、電柱への落書きの有無には「駅や大学の周辺とそれ以外で違いはあるのか」「照明の配置と関係はあるのか」という分析のテーマに行きつきました。
予想では、駅周辺では人通りが多く人目につきやすいため落書きが少ない、大学周辺では日頃の駅からの通学路ではあまり落書きがあることは認識できていないという観点から治安が良さそうだと考えていました。
この分析を進めるにあたり、駅と大学の「周辺」という抽象的な表現を具体的に視覚化するために、QGISの「バッファ」という機能を使いました。「バッファ」は図2,3にあるオレンジと紫色の囲みのように、ある地点から一定距離の領域を示すことができます。「周辺」の範囲設定は、駅と大学、双方とも今回は70mとしました。駅周辺と大学周辺が重複しないような距離の設定です。
また、図3には、落書きの場合と同様に、電柱に照明がついているかどうかでの色分けを表示しました。

※昭和女子大学の周囲70mを紫、駅の周囲70mをオレンジで表示

※照明のない電柱を黄色、ある電柱を紫で表示
これらの分析の結果から、駅周辺の落書きは多いことが判明し、学校周辺は治安が良く、駅周辺は治安が悪いということが分かりました。また、実際に照明が多い場所には落書きが少ないため、照明があることによって治安は守られていることが分かりました。
○学校周辺は照明が多く、落書きが少ない
○駅周辺は照明が少なく、落書きが多い
この2つの分析結果から、照明と落書きの数は反比例しており、「照明の少ない場所は治安が悪い」ということが分かります。
なぜ、そのような関係が見られるのでしょうか?照明が多い場所では人目があると認識されやすく落書きなどが抑制され、反対に照明が少なく暗い場所では人通りが減り監視の目が届きにくいため、落書きが発生しやすくなるという予想が概ね成り立っていると考えられます。特に、照明の少なかった駅周辺には栄通りを中心に商店街や夜まで営業している飲食店があることから、照明を設置しなくても通りが明るい一方で、深夜などの閉店後の灯りがなくなる時間帯に落書きが発生しているのではないかと考えられました。
最後に、私たちのグループ分析では「落書きが多い少ないの関係」について印象での評価に留まってしまいましたが、これから社会調査士関連科目で習う知識を応用すれば、より客観的な評価ができるようになります。実際に先輩たちの班ではそのような分析を発表していました。私たちは、この「未来技術と人間社会」の授業では、社会調査士への第一歩として、実践的な経験を得ることができると思います。
是非、これから一緒に現代教養学科で学びを深めていきましょう!