こんにちは!現代教養学科3年の安藤緒美、安達温、粟井仁香です。
7月8日(火)のソーシャル・イノベーション概論(担当:見山謙一郎教授)では、株式会社コーセーの経営企画部サステナビリティ戦略室の河野斉治室長と堀川沙友里さんにお越しいただき、「コーセーのサステナビリティ戦略と社会課題への取り組み」をテーマにご講義いただきました。化粧品業界の第一線で活躍される企業の取り組みを直接学べる、大変貴重な機会となりました。
コーセーの理念と事業展開について
河野さんからは、コーセーの概要や理念、そして幅広いブランド展開についてお話を伺いました。
コーセーは1946年創業、「美しい知恵 人へ、地球へ。」を企業メッセージとして掲げ、現在38ブランドを展開しています。社名の由来や「化粧品は人々の心と肌を豊かなものにする」という創業理念には、人と地球に寄り添う姿勢が込められているとのことです。
化粧品は薬機法により、「身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚や頭髪を健やかに保つもの」と定義されますが、コーセーはそこに楽しさやワクワク感、自分と向き合う時間、自己表現という価値も見出しています。
また、創業者・小林孝三郎氏が戦後の焼け野原の東京で「化粧品は人の心を明るくする力がある」と信じて事業を始めた背景が語られ、その精神が現在のサステナビリティ戦略にも通じていると説明がありました。
さらに、コーセーはバリューチェーンの各段階で生じる社会・環境課題に向き合っています。例えば、容器に使われるプラスチックや原料調達による自然破壊、温室効果ガス排出、人権課題としての低賃金労働などが挙げられます。これらに対し、資源循環の促進、再生可能エネルギーの調達、認証原料の使用といった取り組みを行っているそうです。
加えて、水不足、生物多様性の損失、海洋汚染といった環境課題、さらにはルッキズムやメンタルヘルスの問題まで、化粧品産業が直面する幅広い課題との関係性が具体的に示されました。

中長期ビジョンとサステナビリティ戦略について
コーセーは中長期ビジョンにおいて、ありたい姿「Your Lifelong Beauty Partner」を掲げ、その実現を目指し企業活動を進めています。その中で「サステナビリティ戦略」は、社会・環境領域の重要課題(マテリアリティ)解決に向けたコミットメントにより、価値創出や企業基盤に関わる戦略、事業の核となる戦略を強化する役割を担っています。
マテリアリティとしては大きく「人・地球へ寄り添う」6つのテーマを掲げており、その中の一つ「多彩な美しさの尊重」では、画一的な美の押し付けではなく、年齢・性別・肌質・髪質・背景など、一人ひとり異なる「美」を尊重し、自分らしさを大切にした美しさを実感できる商品・サービスを提供し続けることを目指しています。
マテリアリティ解決の具体例として、コスメデコルテの40色展開のファンデーションや、男女問わず使用できるスキンケア商品、少年野球チームや保育施設への日焼け止め寄贈と啓発活動、海外での女子教育支援(タンザニア「さくら女子中学校」)など、多角的な取り組みが紹介されました。また、障がい者雇用を推進する特例子会社「アドバンス」の設立や、男性育休の取得促進(2024年は85.7%)など、企業内部のダイバーシティ推進にも力を入れていることが強調されました。
さらに、環境面では、水資源や森林などの環境保全に配慮した、サステナブルな要素を取り入れた工場(2026年稼働予定)の建設やサステナブルなパーム油の採用、メイクアップ製品のアップサイクル、植樹活動など、経済・社会・環境の価値を「トレードオフではなくトレードオン」で最大化する姿勢が印象的でした。特に雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクトでは、2009年からサンゴ礁の保全活動を継続し、累計12,736㎡の植サンゴを実現していることが紹介され、環境保全活動の象徴的事例として取り上げられました。
さらに環境意識の向上に向けては、DECORTÉ 「Sustainable Ingredients Project」として、北海道美深町でブランドの象徴である白樺を守り、持続可能な原料調達を進めています。また、グループ会社であるコーセーコスメポートの「BIOLISS PEACEFUL GREEN」プロジェクトでは、植樹活動を通して、地域の小学生との交流や、豊かな自然を次世代に引き継ぐ取り組みを行っているという説明がありました。
堀川さんによるキャリアに関する講義
堀川さんからは、これまでのキャリアパスについて伺いました。複数の業界や職種を通しては「商品と人、ブランドと人、会社と社会」それぞれを“つなぐ仕事”を経験してきたこと、、そして仕事を選ぶ際の軸として「やりがい・自己表現」「多様な価値観の形成」「社会貢献」という3つを持っているとのことです。
また、コーセーにはジョブリターン制度など、誰もが働きやすい環境を整える制度も存在します。堀川さんの就活に対する考え方をお聞きして、キャリアには正解がなく自分自身で正解に変えていくしかないというお言葉がとても印象的でした。
さらに、堀川さん自身のキャリアの変遷(営業職から退職、ネイリスト、他社PRを経てコーセーに復帰し、現在はサステナビリティ戦略室所属)も紹介され、異なる経験が視野を広げ、ブランドや企業の価値を多面的に伝える力になるのだなと思いました。

講義全般からの感想・学び
今回の講義を通じて、化粧品は単なる美容のための製品ではなく、人々の心や社会、環境に影響を与える存在であることを実感しました。コーセーは多様な価値観に寄り添う商品開発と、持続可能な社会づくりを両輪として進めており、その姿勢は「美」を通じた社会貢献のモデルケースであると感じました。
また、広報活動の重要性や、自分の軸を持ち主体的にキャリアを築くことの大切さも学ぶことができました。(安藤)
講義を通じて、コーセーが化粧品の製造販売にとどまらず、人権問題やジェンダー平等、環境問題など多様な社会課題に真摯に取り組んでいることを知り、強く印象に残りました。特に、40色ものファンデーション展開や、障がいの有無を問わず誰もが活躍できる制度づくりなど、多様性を「言葉」ではなく製品や制度として具体化している点に本気度を感じました。また、雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクトや化粧品廃材のアップサイクルなど、化粧品企業ならではの環境への工夫も興味深かったです。
一方で、これらの活動は消費者に十分知られていないと感じました。素晴らしい取り組みであるからこそ、もっと積極的に発信し、製品を買う行為が社会貢献につながるという認識を広めてほしいと思います。
今回の講義を通して、社会貢献とはCSRの枠を超え、企業活動そのものと社会課題解決を結びつけることが重要だと学びました。(安達)
講義を通じて、コーセーは美の追求だけでなく、その事業活動を通じて多様な社会貢献に取り組んでいるということが分かりました。特に「社会的機会の後押し」は、美容が持つ力を他の社会活動への活力に変えている点で私の中でも興味深い活動でした。
「コスメデコルテ パープルリボンプロジェクト」は、女性に対する暴力の根絶を目指し、商品の売上の一部寄付やライトアップで社会への啓発と被害者支援を行ってることを知りました。「美」という視点で言えば、被害者支援はその人が美容に気配れるような機会を与えるだけでなく、女性として人権を守る活動として素敵だなと思いました。
また、インフィニティの「Share the Bloom」キャンペーンでは、製品のコンセプトにも繋がるエチオピアのバラ農園で働く女性たちに、繰り返し使える生理用品を寄付し、女性の尊厳と就労環境を守っているというお話がありました。美を通じて、女性や少女たちが直面する課題解決に寄り添い、彼女たちの可能性を力強く応援するコーセーの姿勢に感銘を受けました。
これから就活を進めていく上で、企業のCSRやサステナビリティの取り組みについても企業研究に含み、その企業がどのように社会に貢献しているのかについても重要視する必要があることを学びました。(粟井)
コーセーさんからのコメント
この度は貴重な機会を頂きありがとうございました。講義やリアクションペーパーを通して、学生の皆さんの“サステナビリティ”に対する知識や関心の高さをうかがい知ることができ、我々も大変刺激を受けました。
今回の講義の中で何か少しでも感じたことがありましたら、ぜひ実生活の中でも意識をしたり、実践して頂ければ嬉しいです。(河野斉治さん)
エネルギー溢れる皆様のご意見を直接お伺いすることができ、私自身多くの学びをいただきました。
今後化粧品会社として、実際にコスメを使う皆様がコーセーと一緒に社会課題に取り組んでいると実感していただけるような商品やサービス・活動を行っていくことが私たちの課題だと思います。この度は本当にありがとうございました。(堀川沙友里さん)