授業紹介【広告文化論】楽天グループさんと広告制作の特別授業を実施-後編

こんにちは!現代教養学科4年の鈴木絢、市角來未です。

今回のブログでは、前編に引き続き「広告文化論」での楽天グループ株式会社(以下、楽天)さんとの広告制作実習の成果報告を皆さんにお伝えします。

「広告文化論」では、生成AIをはじめとするデジタル技術の発展や社会環境の変化により変わりつつある「広告」の姿について学んできました。企業のマーケティングの方法や、人と人とのコミュニケーションの在り方が日々変化する中で、広告の新たな定義が議論されています。
しかし、広告が「情報の送り手の意図を対象に届けるという“効果”」と「情報の受け手にとっての意味づけという“影響”」という双方向の関係を基盤としている点は変わりません。

授業では、広告を広告主と消費者のコミュニケーションとして捉え、現代のマーケティングにおける広告の社会的・文化的背景を理解してきました。また、Adobe ExpressやCanvaなどのクリエイティブツールを用いた実践的な広告制作にも取り組み、企業等に向けた提案を行うことで、自らのクリエイティブ・コンフィデンスを高めることができました。

【楽天さんからの課題】

前編でお伝えしたとおり、6月20日に楽天 グループマーケティング部の川上さん、大木さんに特別講義をしていただき、楽天の企業理念やミッション、事業展開、さらに今後の課題についてお話を伺いました。
楽天の強みは、楽天ポイントを基盤とした「楽天経済圏」。これにより、社会や人々の生活をエンパワーメントしています!

一方で、今後の事業戦略に向けて、若年層向けの課題意識があるそうです。
「楽天のサービスを好きになってもらうにはどうすれば良いのか?」
「大学生が楽天のサービスを使っているのか、その理由とは?」
「高校生~社会人に楽天のサービスを選んでもらうための適切なコミュニケーション方法とは?」
これらの課題に応えるために、私たちは授業の最終成果物として「Z世代に向けた広告制作」の課題に取り組んできました。

そして、グループワークによる1か月の制作期間を経て、ついに制作物の発表会を行いました!

【7月25日 制作広告の最終プレゼン】

最終回の授業内容としては、全9グループが制作した楽天の広告を、楽天の「若年層エコシステムアクティベーション課」の社員の方々に実際にプレゼンし、直接フィードバックをいただくことがメインでした。9つのグループは、若い世代に楽天サービスをより身近に感じてもらうための広告案を、それぞれの視点から提案しました。

TikTokアカウントを運営しているグループや、楽天学割の新しいアイコンを制作しているグループ、ポスター広告を作成しているグループなど、広告媒体は実に多様でした。アピールする内容も、楽天トラベルに焦点を当てたものから、楽天経済圏全体をテーマにしたものまで幅広く、同じテーマでもこれほどアプローチが異なるのかと驚かされました。

また、多くのグループに共通していたのは、「押し売り」感を避ける工夫です。例えば、イメージカラーを黄色やピンクなど明るくポップな色にして親しみやすさを演出したり、過剰な情報量を避けてシンプルに魅力を伝えたりと、自然と受け入れられる広告を目指している点が印象的でした。
こうした多様な発想や表現方法を見ることで、自分たちのグループだけでは思いつかない視点を多く得ることができ、とても刺激的な時間となりました。

プレゼンの様子(1)

広告の制作中、私たちのグループ含め、受講生皆が一番に考えたことは、「どんな広告なら自分自身がサービスを使いたいと思えるか」だったと思います。
みんなと違う自分だけの体験や、SNSを意識した体験に魅力を感じる人に向けて、サービスをアピールする広告。新生活を始める人に、また、それぞれの人生に寄り添う存在として楽天グループをアピールする広告。各グループが、あらゆる視点からZ世代の価値観に刺さる表現やストーリーを考え抜きました。
「どのようなアプローチが(Z世代にとって)自分ごととして捉えられるか」。この視点が広告には重要だと学びました。

【フィードバックを受けて】

試行錯誤を重ねた広告を発表し、見山先生、そして楽天の皆様からフィードバックをいただきました。

私たちのグループが提案したのは、「お買いものパンダ」を活用した、電車内用の動画CMとポスターの広告です。お買いものパンダが楽天のサービスを使用してポイントを貯めるシーンを描き、ストーリー仕立てで楽天経済圏をアピールしました。

そして、楽天さんからのフィードバックでは、「ポイントの活用方法のわかりやすい伝え方に課題を感じていたため、表現方法が参考になった」というお言葉をいただきました。楽天経済圏の良さを、かわいく、さりげなく伝えるための私たちのこだわりがうまく機能したのでは、と嬉しく感じました!
楽天の皆様には、消費者として私たちが寄り添う受け手側の視点と、学生の自由で豊かな発想力をお伝えできたと思います。

プレゼンの様子(2)

また、楽天の皆さんから、電車内広告には「刷り込み」の効果があることを教えていただきました。私たちが電車内広告を選んだ理由として、通勤・通学でよく目に入り、印象に残りやすいのではないかという思惑がありました。
フィードバックを受けて、実際に電車内広告による認知向上の効果は強いことを、マーケティングの視点から学ぶことができました。身をもって広告のプロの視点を体験することができ、貴重な機会となりました。

楽天さんからのフィードバック

【授業を通しての学び】

15回にわたる広告文化論の授業を受けて、現代における広告では、サービスの魅力を一方的に推す自己満足的な方法では不十分となっているとわかりました。広告を通して誰かに興味をもってもらうために、社会や人々の深層にある価値観と向き合い、共感を得ることが大切なのです。
もちろん視覚的な面白さも肝心です。共感を呼ぶストーリー性、そして、つい見続けてしまうような、印象に残るような表現力が、今後の広告には特に求められると思います。
そして、そんな広告によってこそ、誰かのニーズに寄り添い、心を、社会を動かすことができるのではないでしょうか?

Adobe ExpressやCanvaを使用したポスター・動画・アニメーションの作成は、私たちにとって新しい挑戦でした。思い通りに表現できないもどかしさもありましたが、頭の中のイメージを形にする作業は楽しかったです!見た人に「楽しそう」「かわいい」と関心をもって面白がってもらいつつ、「自分も使ってみたい」と前向きに関心を持ってもらえるように工夫を凝らすという、面白い経験ができました。

広告文化論の授業を受けてから、街中の広告施策を見ると、何をどのように伝えているのか、その背景や工夫をマーケティングの観点をふまえて想像するようになりました。
一方で、今の私たちが自然と抱く「もっとこんな方法が目を惹くのに」というような消費者側のニーズの自由な発想力や、正直で真っ直ぐな感受性も重要なのだと気づきました。もしかすると、社会人となりビジネスの視点を追求するようになると、今考えるようなアイディアには、リスクや事情を気にして目を伏せてしまったり、気づきにくくなったり、思い出しにくくなったりするのかもしれません。
しかし、非現実的だとしても「あったらいいな」と考える想像力、思考力は社会を創造する上で欠かせない視点になるはずです。大学生活のうちにこの思考力を鍛え、身につけ、今後も忘れないでいたいです。
これからも社会や人々を観察していきたいと思います!(市角)


全15回の授業を通して、私にとって「広告」とは単なる商品の宣伝ではなく、「送り手と受け手の間で価値や体験を共有し、関係を築くためのコミュニケーション」だということを実感しました。
授業前は、広告と聞くとポスターやCMなどの目に見える形ばかりを想像していましたが、実際には、その裏にあるターゲット分析や社会的背景の理解、そして受け手が「自分ごと」として捉えられる表現の工夫が欠かせないことを学びました。
特に、楽天とのコラボを通して感じたのは、広告において重要なのは「押しつけではなく共感を生むこと」だという点です。明るい色や親しみやすいキャラクター、ストーリー性のある展開など、小さな工夫の積み重ねが受け手の心を動かします。
また、広告の形は一つではなく、SNS動画からポスター、イベント企画まで多様であり、媒体や手法の選択そのものがメッセージの一部になることも体感しました。

15回の学びを通じて、広告は社会や文化の変化を映し出す鏡であり、時代とともに常に進化し続けるものだと気づきました。これから広告に触れるときは、ただの「情報」ではなく、その背後にある意図や文脈、そして送り手と受け手をつなぐ物語にも目を向けたいと思います。(鈴木)


【楽天さんからのコメント】

楽天 グループマーケティング部 大木 未菜美さん

この度は貴重な体験を、ありがとうございました。
まず、学生さんが時間を割いて楽天について考えを巡らせてくださったことが何より嬉しかったです!そして、個性豊かなアイディアをたくさん聞けて、純粋に楽しく且つ学びの多い機会でした。

企業は(特に楽天は)伝えたい情報量が多いがゆえ、どうしても説明的に表現をしてしまいがちですが、改めて皆さんの発表を通して、まずは直感的に「何か良いかも・自分にも関係ありそう」と思ってもらうことがファーストステップであるべきだと感じさせられました。

その為には、彼女たちのリアルな日常シーンの中で実際にどうメリットがあるのか、おトクの咀嚼をしつつ、彼女たちの行動に紐づいた楽天の在り方をさりげなく示していくことが重要なのだと思います。それをどうしたら押し付けがましくなく伝えられるか、皆さんに頂いたアイディアを参考にさせていただきながら引き続き探求してまいります!


楽天 グループマーケティング部 川上 和香奈さん

この授業ならではの特徴だと思いますが、学生の皆さんが楽天の企業理念やミッションをしっかりと理解した上で、広告というアウトプットを通じて「楽天と大学生との接点」をそれぞれの視点からデザインしてくださったことが本当に嬉しく、同時に私自身にとっても大きな学びとなる時間でした。

私たちが届けたいメッセージの本質を受け取ったうえで、それをどのような手段や表現に落とし込み、大学生に「自分ごと」として感じてもらえるきっかけへと変えていくのか。完成した広告からだけでなく、そこに至るまでの議論や思考の積み重ねも発表を通じて強く伝わってきました。さらに、チームごとにアウトプットの方向性やアプローチが異なり、予想以上に多様で創造性あふれる可能性を見せていただき、とてもワクワクした時間でした。
あらためて、このような貴重な機会をいただき、ありがとうございました。