【授業紹介】フィールドリサーチ研修 in 山陰(3)~松江市編その1(小泉八雲記念館)

みなさん、こんにちは。現代教養学科3年、松江チームの佐野ななみと、2年渡辺咲登です。
今回は、現地訪問2日目午後の様子を紹介します。

前期の取り組み(学び)について

前期は松江のイメージの共有から「小泉八雲とは」「松江城とは」「怪談とは」といったテーマを設定し調べていきました。私たちのチームでは、松江のイメージや、小泉八雲が生まれてからどのようにして日本へ来たのか、どのような人生を贈っていたのか、なぜ日本に関心をもったのか、精霊信仰や再話文学などについて理解を深めることが出来ました。
小泉八雲は1904年出版の「怪談」で松江を「怪談のふるさと」と称している他、松江城にまつわる「人柱伝説」といった松江に根付く話もたびたび自身の本に収録していました。加えて、怪談の定義を調べていく中で、水木しげるに怪談を聞かせていた「のんのんばあ」についても調べていきました。これらを調べていく中で傾向としてみられたのは「口伝」として現代まで継承されていること、「目に見えないもの」を受け入れて日常が続いていることでした。ここから、私たちは神話や土地の歴史、妖怪と怪談の繋がりや境界線がどこにあるのかということに疑問を持ちました。その後、中海・宍道湖・大山圏域市長会の方々へ中間報告のためのプレゼンをさせていただきました。

実際の現地での活動について

小泉八雲記念館:小泉八雲の生涯

小泉八雲記念館に到着し、小泉八雲のひ孫にあたる小泉凡館長のお話を伺いました。小泉館長からは、八雲の世界観を形作った人々や各地に根付く信仰、八雲の「怪談」をはじめとした再話文学が世界で受け入れられている理由、そしてオープン・マインドな姿勢などについて丁寧にお話しをいただきました。八雲は幼少期から精霊信仰に親しみ、来日以前にも各地でゾンビ信仰や民話、ヴードゥー教の俗信を取材してきました。最初の妻が語り手であったこともあり、日本の怪談もその延長線上に位置づけられます。再話文学の制作には妻である小泉セツが深く関わっており、特に「怪談」は多言語に翻訳され、現在も世界的な影響力を持っています。また、八雲は虫への関心や水木しげるとの共通点も多く、アニミズムの中でも輪廻転生に強い興味を抱いていました。「飴を買う女」に添えた「母の愛は死よりも強い」という言葉に象徴されるように、怪談には普遍的な真理が込められています。八雲の作品は海外で積極的に評価され、アメリカやアイルランド、イタリアでも関連イベントが続いています。人と自然、東洋と西洋をつなぐ八雲の物語は、現代の「つながり」を求める社会とも響き合い、観光の分野でも『知られぬ日本の面影』が今なお広く読まれ、小泉八雲記念館を目当てに来日する人も多くいるとのことでした。 お話の後は学生側からも質問させていただき、八雲の文学の中にある真理や八雲自身が現代まで松江に与えている影響など、さらに理解を深める事ができました。その後、見学をさせていただいた記念館や旧邸では、実際に八雲が使用していた家具や八雲が執筆した新聞記事などを見学させていただきました。見学をしているなかで八雲のこだわりや考え方を実感することができました。

実際に現地を訪れて感じたこと

小泉凡館長のお話を伺い、八雲の世界的な影響力が想像以上に大きいことを知り、とても驚きました。また、水木しげると小泉八雲の共通点や繋がりなど事前学習では知りえなかったことをたくさん聞くことができ、とても勉強になりました。事前に調べていた内容と実際にお話を伺い、見学をして得たものを照らし合わせて行く中で、八雲の身長が160㎝ほどで、日本家屋では暮らしにくいのではないかと思っていた自分には「外国人であるから」という先入観があったことも分かりました。水木と八雲は虫に対する興味やタイラーを尊敬しておりそれぞれの作品に大きな影響を受けていたこと、幼少期に乳母や世話役から精霊や怪談といった「目に見えないもの」の話を聞かされて来た事など多くの共通点がありました。虫には「一寸の虫にも五分の魂」といったことわざや死を運ぶ虫という伝承というように怪談や妖怪という二人の世界観に繋がる側面を多く持っています。個の側面を感じ取り、二人は虫に大きな関心を持ったのではないかと考えました。個人的に怪談の真理が興味深く、お話にあった生まれ変わりをテーマとした作品たちも同テーマでありながら真理は異なるのかが気になりました。
八雲の再話文学で表現された物語の真理は、時代や場所を越えて人々をつなげており、この研修のテーマである「ストーリー・ツーリズム」と深く関わるものだと感じました。そしてこの真理は、水木しげるの作品や神話ともつなげられるのではないかと考えます。

小泉凡館長のお話の様子

今回の現地訪問からの学びと、後期に向けた抱負

今回の現地訪問によって、今まで縁遠く事前学習では気づくことのできなかった点について、小泉凡館長をはじめとした方々のお話を伺ったことで考え方や、当時の暮らしの解像度が高まりました。また、知識を身に着けたうえで実際に訪問し体験することで作品に込められた思いや背景、自身の先入観を客観的に見ることができることを学びました。後期は現地視察で感じた雰囲気や事前学習との差、違和感について言語化し、得た知見をしっかりと活用して考察していきたいです。
最後に今回小泉館長のお話を伺い、現地訪問前には知り得なかった小泉八雲の精神を形作った背景や水木しげるとのつながり、今回の目標であるストーリー・ツーリズムへのヒントなど様々なことを学び、実感することができました。お忙しい中、貴重なお話をしてくださった小泉凡館長に改めてお礼申し上げます。


小泉館長から学生へのメッセージ

このたびは、山陰地方の米子、境港、松江、出雲をフィールドとする、きわめて充実した社会調査を実施していただき、ありがとうございました。みなさまのコメントを拝見し、庄司館長や錦田宮司、飯塚神職と私のお話が、はからずも共振したことを知り、その<つながり>をとても嬉しく受け止めました。すなわち山陰地方は、目に見えないものを畏怖し、人間と異界が共生する、そんな人々の営みの歴史があり、そのことが現在のストーリー・ツーリズムの生み出す力になっているということです。それに気づくことができたのは、みなさまのお陰です。感謝いたします。
私事ですが、先週は、台湾にいました。北投文物館で日本の妖怪文化の企画展が開催されていて、当館からも画像を提供していたため、見に行ってきました。台湾の人たちも、目に見えない世界を大切にする文化をもち続けていて、多くの人で文物館は賑わっていました。そして台湾の人々のオープン・マインドで倫理観に富み、とても親切な人柄に魅了されました。みなさまには、新しい未来を構築するために、脱人間中心の視点で、さまざまな地域振興へのご提案をしていただけると嬉しいです。


撮影協力:小泉八雲記念館

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