2020年8月

風ー明治期の作品からー [2020年08月27日(木)]

 秋のたよりが聞こえてきましたね。「八月十八日という日-渇きをいやすために-」日本語日本文学科教授・吉田昌志先生の日本語日本文学科ブログ<日文便り>の樋口一葉「塵中日記」からの明治26(1893)年8月18日の天気、本当のところ気になりませんか? 当日の「東京朝日新聞」朝刊の「天気予報」※によれば、
  (一より三)北又ハ西の風概ね晴れ但し雨模様の處あり
  (四より七)南又ハ東の風概ね曇り但し雨模様あり
  (東京の部)南の風、雨
  〇警報 十七日午前八時三十五分一区東部二区東部及四区の海陸を警戒す、
  一区西部二区西部三区及五より七区の沿海を警戒す、
  同午後三時三十五分五より七区海陸を警戒す
と、警戒警報が発表されていました。一葉の “朝来(あさより)あれもやうにて、風ものすさまじ。(略)夕刻より雨に成る。風力さらに加りて、ほとんど嵐に似たり。”という表現から十分に頷けますね。作家等の日記は、他愛のないことでも些細なことでも、情景や考えなどを簡潔に端的に表現し、時に美しく描写していますので、私たちは、今から約110~130年前の出来事であっても、生活の風景や様子、さらには筆者の表情、声を想い描いて親しみを感じる面白さがあります。ここで吉田先生がブログでご紹介されていた日記の解説や口絵付きなどの書籍をご紹介します。
〔樋口一葉〕
 ・「塵中日記」『全集樋口一葉』第3巻 日記編 前田愛編. 小学館(1979年12月)[p.211-214]
   [請求記号:近代文庫 14/7243]
 ・『樋口一葉日記』上・下・別冊付録 樋口一葉[著]. 影印版. 岩波書店(2002年7月)
   [請求記号:B2F D書庫915.6/Hig/1~3]
   *影印版では、一葉の筆跡なども観賞できます。
〔森鷗外〕
 ・『鷗外全集』第35巻 日記 森林太郎著. 岩波書店(1975年1月)
   [請求記号:B2F D書庫918.68/Mor/35]
  同第36巻 書簡(1975年3月)
   [請求記号:B2F D書庫918.68/Mor/36]
  同第38巻 手記・雑纂・年譜・著作年表(1975年6月)
   [請求記号:B2F D書庫918.68/Mor/38]
〔夏目漱石〕
 ・『漱石全集』第19巻 日記・断片上 夏目金之助著. 岩波書店(1995年11月)
   [請求記号:近代文庫14/7513/19]
  同第20巻 日記・断片下(1996年7月)
   [請求記号:近代文庫14/7513/20]

夏目漱石『二百十日・野分』
(新潮文庫刊)

夏目漱石『二百十日・野分』
(新潮文庫刊) [所蔵本]

 ところで、暦はもうすぐ雑節「二百十日」です。立春から数えて210目(9月1日頃)は、暴風や台風が多い季節で稲穂が出始める頃なので、農家では厄日として警戒します。漱石の『二百十日』は、阿蘇山の大自然を背景に、二百十日の風雨と情景がリアルに目に浮かんでくる会話体の小説です。圭さんと碌さんが阿蘇山に登った際の出来事の中で、“「(略)。山の模様はどうだい」「段々荒れるばかりだよ」「今日は何日だっけかね」「今日は九月二日さ」「ことによると二百十日かもしれないね」”という会話が交わされます。明治39(1906)年の『中央公論』第21年第10号秋期大附録号に掲載された二百十日(9月2日)の天気は、“全国を通じ凡て静穏”(「東京朝日新聞」同日朝刊)でしたが、漱石が阿蘇(気象区は第三区)を旅したとされる明治32(1899)年の二百十日(9月1日)は、「東京朝日新聞」9月2日朝刊の「二百十日の概況」に、“昨朝九時一、二、三区の東部、五、六区の沿岸及び四区の海陸に警戒を加へたり”との中央気象台(現気象庁)からの報告で警戒情報が発表されていたことが窺えます。「二百十日」は、要警戒日ですね。気を付けて過ごしましょう。
 二百十日、二百二十日前後に吹く暴風、台風は、野の草を吹き分けることから「野分」(のわき)と言います。「野分」は、源氏物語の巻名でご存知の方も多いことでしょう。浮世絵師豊原国周の錦絵「現時五十四情 第廿八号」の中にも「野分」“風さわぎ むらくも(むら雲) まよふ ゆふ(夕)べにも  わするる まなく わすられぬきみ” が描かれています。
 さて、令和2年の二百十日は、8月31日にあたりますが、強風に見舞われるのか、それとも・・・? 今年は、新型コロナ禍による新しい生活の中、近代作家に想いを馳せながら日記や作品を手に取り、天候を見守りましょう。読み応えありますよ。

豊原国周筆「現時五十四情」第28号「野分」

・『二百十日・野分』(新潮文庫な-1-16)夏目漱石著.
  新潮社(1976年7月)[請求記号:3F開架室 080/Shi/な1-16]
・『漱石全集』第3巻 草枕・二百十日・野分 夏目金之助.
  岩波書店(1994年2月)[請求記号:近代文庫14/7513/3]
・「現時五十四情」第28号「野分」豊原国周筆.
  [武川清吉(1884年刊)] [請求記号:和721.8/7/1-24-4]

〔参考〕
※「東京朝日新聞」1893年8月18日朝刊(第2621号)
  東京朝日新聞社
  *当時の気象区は、全国を七区に分けており、東京は
   第四区にあたります。

(みどりの葉K.M.)

【本の紹介】ねこと国芳 [2020年08月20日(木)]

ねこのしおりもかわいいです☆

タイトル:『ねこと国芳』
著者:金子信久
出版年:2012年10月
出版社:パイ インターナショナル
配架場所・請求記号:4F開架室 721.8/Kan

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梅雨が明けたと思ったら、連日35度以上の猛暑!
外に出るのが嫌になるくらいですので、ここはひとつ読書などいかがでしょうか。

本日ご紹介したいのは、江戸後期の浮世絵師、歌川国芳(1797―1861)が描いた浮世絵のうち、特に「猫🐈」を描いたものを中心に紹介している本『ねこと国芳』です。

国芳は大の猫好きだったようで(常に数匹~十数匹の猫が自宅にいたそうです!)、猫が描かれている作品が多数残されています。
本書は当時の流行の最先端の社会風俗や人気役者・評判の美人などとともに描かれる猫や、擬人化された猫、はたまた猫以外のいきものを描いた作品を集めており、とにかく可愛い!
国芳は実は生粋の江戸っ子で、「宵越しの銭は持たない」「堅苦しい礼儀礼節は好まない」といったエピソードが残っており、「猫好き」とは一見結びつかない人柄も面白いポイントですね。
金子信久氏による解説付きなので、ぱっと見ではわからない魅力やおもしろさに気付くことができ、読み物としても楽しめます。


こちらは本書で紹介されている浮世絵です。
*どちらも東京国立博物館で所蔵されており、研究情報アーカイブスから画像の検索ができます。
左の「猫あそび」はことわざや言い回しを猫で表現した絵のようですが、みなさんはわかりますか?ぜひ想像力を働かせてみてください!(ちなみに私はさっぱり思いつかず…)
右は金魚のシャボン玉売りです。かわいいですね~。なごみますね~。

[参考] 
歌川国芳についてもっと詳しく知りたい方は↓こちら↓もどうぞ。
・もっと知りたい歌川国芳 : 生涯と作品 / 悳俊彦著(東京美術)4F開架室 721.8/Isa
・歌川国芳 : 21世紀の絵画力 / 歌川国芳 [画] ; 府中市美術館編著(講談社)4F開架室 721.8/Uta
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