<研究室便り>
作家、遠藤周作は、しばしば長崎を舞台にした作品を書きました。「沈黙」「女の一生 一部・キクの場合」「二部・サチ子の場合」など。
今回、長崎の遠藤周作文学館で調査をするついでに、ずっと気になっていたある実地踏査をすることにしました。それは、「今、長崎十六番館はどうなっているのか」です。
〈ミニ講義〉遠藤周作の代表作「沈黙」は、長崎十六番館で親指の痕のついた踏み絵を見たことがきっかけで執筆されました。その指痕に「本当は踏みたくなかったのに、拷問が怖ろしかったために踏んでしまった、切支丹(きりしたん)信徒たちの思い」を遠藤は読み取り、その弱い者たちの痛みを理解し、母のように受け止め、慰めてくれる存在-母なるイエスを書いたのです。
その踏み絵は東京国立博物館に収められ、十六番館は閉じられた、ときいていました。
ところが、インターネット検索をすると、「南山手十六番館歴史資料館」の案内や「十六番館見てきました」の記事が……。「???」。
はるばる長崎まで飛び、駅に着くや、まずは電話(案内にあった番号)です。
→「この電話番号は現在…」。やっぱり。
駅の近くにある日本二十六聖人殉教地資料館見学の後、そこの受付の方にうかがっても、
→「たぶんないですよ」。やっぱり。
もう、行ってみた方が早い。
路面電車に乗り、一路、南山手へ。
大浦天主堂やグラバー園へと流れていく観光客たちを後目に、ひとり右手に進むと……。
「ああっ! (^o^) 」ありました。案内で見たとおりの建物。説明板もあります。
ところが、喜んだのもつかのま。左手をよく見ると…。
「ああっ! (>_<) 」何たること。
真相を知った私は何だかとっても疲れてしまい、大浦天主堂の木の椅子に腰掛け、しばし呆然とし、癒やされたのでした。
ついでに言うと、大浦天主堂の祭壇横のマリア像は〈信徒発見〉のきっかけとなったもので、遠藤も「女の一生」でとても感動的に描いています。
翌日、気を取り直して、遠藤周作文学館に向かいました。
(FE)