<日文便り>
日本語日本文学科では、グローバル人材育成事業の一環として、1月18日に海外の日本文学研究者を招聘して特別講演会を行いました。
テーマは「海外における日本文学の読まれかたについて」で、講師は、上海交通大学副教授の呉保華先生と、タフツ大学教授のチャールズ・イノウエ先生でした。
呉先生は、中国における日本文学の受容について、日本文学学習者用の教科書に掲載されている作家ランキングや作家ごとの掲載作品数を紹介してくださいました。
また、志賀直哉の「城の崎にて」の語彙、表記、漢字の調査の報告では、作者や編集者の意図が反映されない改変についての問題提起がありました。
日本語は漢字、平仮名、片仮名、外来語を多様に使い分けているのが特徴であり、中国語に翻訳する際には、擬音語や擬態語が日本語のイメージを完璧に伝えることができないということを、具体的な事例を挙げて解説なさいました。
イノウエ先生は、アメリカにおける日本文学の授業において、よく読まれている作家や作品について、古典から現代、さらには日本の文化まで取り上げて説明してくださいました。
また、タフツ大学で同僚だったという村上春樹についてのエピソードを紹介してくださり、村上春樹がなぜ世界的に人気があるのかを、詳細に解説してくださいました。
村上春樹作品が外国人に受け入れられるのは、日本的でない文章であることも挙げられるが、何かを探し求める主人公に共感を持つ点が大きい。また他国が近代と共に失った伝統が日本で今も大切にされており、「もの」(化け物・もののけなど)がアニミズムとして残っている。春樹の文学もその影響を受けている。
日本人自身は全く気付かないことであるが、ネオアニミズムという観点においては世界的に最先端の文化を持っているのだ、と説明してくださいました。
呉先生、イノウエ先生には、今回の講演会に先立ち、本学科の授業にて御講義をもっていただきました。
呉保華先生は、笛木美佳先生担当の「日本文学Ⅰ(近代A)」で志賀直哉について、
チャールズ・イノウエ先生は、吉田昌志先生の「日本文学史C」で泉鏡花について、
の御講義でした。
授業の内容や学生のコメントは近日中に御紹介したいと思います。
(KW)