〈日文便り〉
先週の土曜日、甲府にある山梨県立文学館に行ってきました。(個人的に)
山梨県立文学館では今月23日まで、太宰治生誕110年の特設展が行われています。
そして15日には、安藤宏先生と川島幸希先生による「太宰治・著書と資料をめぐって」
という対談があり、日帰りで行ってきました。
雨の山梨県立文学館。
ちなみにこのイベントは、日文の助手の方に教えてもらってすぐに申し込みました。
前回の横光展も同様ですが、好きなものを好きと発信すると、大変ありがたいことに
情報をいただくことが多いです。
「好き」という感情は内に秘めずに、積極的に外に発することも大切だと感じます。
当日は雨の中、朝早く高速バスに乗り込み文学館へ向かいます。
文学館では太宰の自筆原稿や書簡、初版本が多く展示されていました。
中でも目を引いたのが初公開資料となる、太宰が『晩年』を出版した際に
佐佐木茂索宛に贈った署名本です。相手の名前と自分の署名のほかに、
短いメッセージが書かれています。その文章を読んでみましたが、
まるで言葉に脈絡のない詩のようで意味が良く分かりません。
頭をひねりながら観覧していると、あっという間に時間が過ぎ、いよいよ対談です。
対談では、『晩年』がやはり大きな話題として取り上げられました。
『晩年』は太宰の処女短編集ですが、遺書のつもりで書いたという作品です。
そのため、太宰にとっても非常に思い入れの強い作品で、『晩年』ほど、献呈本に
相手へのメッセージが添えられているものはないそうです。
(他の本は相手と自分の名前だけのものが多い)
もちろん対談中に、佐佐木茂索宛の署名本の話題にもなり、
私を悩ませた謎の文章にどのような解釈ができるか知ることができました。
私は今まで作品の解釈はしてきましたが、作家が他者に送った文章を
解釈することはあまりしてきませんでした。
なるほどそういう観点もあるのかと、文学との向き合い方の勉強になります。
私は普段、インドアなのであまり出歩きません。
それでも自分の「好き」に従って生きていると、必然的に外に出る機会があります。
実は今回、隣接する美術館でミレー展も観て来ました。
「せっかくここまで来たんだから」という軽い気持ちで行ったのですが、
そこで展示されていたバルビゾン派の絵を観ていてとても面白かったのです。
「好き」を深められたとともに、「好き」が新たな「好き」をつなげてくれた、
貴重な一人文学館でした。
ミレーの『種を蒔く人』をイメージしたドリア。(美術館で食べられます。)
(MR)