<日文便り>
この写真、我家のキッチンのカウンターです。
私は、本の中身もさることながら、装丁のきれいな本に惹かれるので、
気に入った装丁の本を買った時は、ブックホルダーに載せて、しばらくの間飾っておくのです。
そして、料理などをしながら眺められるように、キッチンのカウンターに置いています。
前置きが長くなりましたが、いまキッチン・カウンターに飾っているのは、
エリザベス・ストラウト『オリーヴ・キタリッジ、ふたたび』です。
「ふたたび」から推測されるように、
この小説には『オリーヴ・キタリッジの生活』という前作があります。
オリーヴは、アメリカ東海岸の小さな町に住むごく普通の市民で、元数学教師の老婦人ですが、
前作では、その生活や周囲の人々との関わりが丹念に描かれています。
夢を誘う素敵なことも奇想天外なことも特別なことは何も起こらないし、
オリーヴは憧れの対象となる人物でもなく、むしろ辛辣なところもある人物ですが、
読み進めるうちに何だか目が離せなくなるのです。
普通の人の人生には、たいてい特別なことは起こらず、歓喜に溢れることも、
立ち直れないほど落ち込むこともそうあるものではありません。
その中で、日々の小さな出来事に手を抜かずに生きているオリーヴが何だか愛おしく、
「普通にちゃんと生きるって、こういうことなんだな」と思わせてくれる小説、
と言えばいいでしょうか。
キッチン・カウンターの本は、読む前に飾って読むことを楽しみにする場合もあれば、
読んだ後に飾って余韻を楽しむこともあります。
『ふたたび』は、年末年始のお休みに読もうと思って楽しみにしています。