10/1(土)に行われた日文公開講座「日本語 食うか喰われるか」
リアル会場、ウェビナー共にたくさんの方にご参加いただきました。ありがとうございました。
講座後にアンケートとともに質問を募集させていただいておりました。
回答を何度かに分けて掲載していきますので是非ご覧ください。
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Q:嶺田先生のご講演のラストに「64年東京五輪でTVが普及し共通語化が進んだ」という内容がありました。私は特に最近一段とそれが進んだと感じています。福岡の実家に帰ると、昔は九州では豚汁を「ぶたじる」と呼んでいましたが、今は「とんじる」と読む方が多くなっていますし、「~だよね」などTVの中でしか聞かなかった言葉を街中で聴くようになりました。これは日本全国的な傾向なのでしょうか?また今後は方言は消え去っていくのでしょうか?もしそうであれば今後の方言は「観光資源」のような形で「わざわざ意識して使う言葉」として生き残っていったりするのでしょうか?
A:たしかに、地域特有のことば(や表現)はだんだん共通語化していると思います。今は人の交流も盛んで、初対面の人とは、共通語を使おうとします。私たちは全国どこに行くときも「ことばが通じなかったらどうしよう」と思うこともありません。けれども、長くその地域で使われていることばは、すべてが一気に共通語化するものではないと思っています。すこしずつ、形(や意味)は変わりますが・・・。地域には地域の文化的・地域的特性があり、それに関連するものは、消滅しにくいのではないでしょうか。たとえば、海に面して、海に関連する仕事に従事する人が多ければ、海に関連するその地域のことばはなかなか変化しません。また、変化の方向としても「東京のことば」一辺倒ではなく、その地域で中心的なことばに近づくこともあります。講座でも申しましたが、どう変化するか・しないか、の観点で地域のことばを見たいと思っています。
Q:須永先生のご講演の中で、確か、国立国会図書館の書物データが検索可能、というご紹介がありました。メモをしそびれてしまったので、その情報について、教えていただきたく、よろしくお願いいたします。
A:国立国語研究所で、「コーパス」という形で公開しています。https://www.ninjal.ac.jp/resources/今回のデータは「日本語歴史コーパス」https://clrd.ninjal.ac.jp/chj/を使用しています(無料、ただし利用申請必要)。「コーパス」で用例や、ヒット件数を見てみる、という体験としては「現代日本語書き言葉均衡コーパス」少納言版https://shonagon.ninjal.ac.jp/が、登録も不要で使いやすいです。
Q:導入で、昔の「食」の表現を粗野・標準・上品の順に並べた時、「くらう」「くう」「たべる」だと説明がありました。しかし、本題の時代の変遷ごとの「食」の表現のお話の時には「くらう」はグラフ上に現れて現れていませんでした。「くらう」は、食の表現として一般的だった時代はない(またはとても短い)ということでしょうか。それとも、「くう」が一般的な表現だった時代に、「はむ」とは別の場面で使われるために新しく作られた粗野な表現なのでしょうか?
A:講座内で簡略化させた限りでは、「食らう」が代表的だった時期はない、ということになります。ただ、あくまで「簡略化させると」です。現在の我々が、自分自身でも相手や状況、気分によって使われる言葉が変わるように、実際のところ「平安時代は」と一概には言えない要因は多々あって、そういうところを細かく見ていくとさらに研究が深まります。たとえば、「食らう」については、漢文の環境においては、ふつうの古文よりも一般的に使われることが知られています。
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いかがでしたでしょうか。
他にもまだまだ質問をいただいております。
順次アップしていきますので、次回のブログも是非お楽しみに!
(清水)