Grit と Growth Mindset [2016年07月08日(金)]

<日文便り>

 

近年のアメリカの教育界での流行語に GritとGrowth Mindset という言葉があります。

Gritは名詞で「砂・ホコリ」、動詞で「歯をギシギシいわせる」(擬声語)という意味がありますが、ここでは「不屈の精神」「やる気」といった意味です。

これはペンシルバニア大学のAngela Lee Duckworth (1970年~  )という心理学者が提唱しており、最近Grit : The Power of Passion and Perseveranceという本が刊行されました。

「何かを成し遂げるためにはgritが必要だ」ということなのですが、単なる精神論ではありません。gritの要素として、interest passion perseverane hopeの4つが挙げられています。interestは「興味関心」で、自分がしたいこと、関心のあることを見つけることが第一段階です。第二段階はpassion(熱意)で、自分のしたいことへ思い入れを持つこと、そして第三段階が perseverane(やりきること)で、長い時間と労力をかけて練習や実践をすることです。そしてhope(希望)とは、自分が行うことが、自分自身のためだけではなく他人や社会のためでもある、自分が社会に貢献したいという思いであるとされています。

gritは育てることができるものであり、そのための教育についても提案されています。

 

もう一つの Growth Mindsetはスタンフォード大学のCarol S. Dweck (1946年~ )が主張しており、「自らの能力を伸ばすことができるという信念(心の持ち方)」が学習や成長に必要だというものです。つまり能力や適性は生まれつき決まっていて自分ではどうすることもできないという考え(fixed maindset)を抱いていると成長することはできないけれども、「努力や練習によって能力が伸びる」という考え(growth mindset)を持っていれば、実際に力が伸びる、ということです。

 

これらの考え方を現実に適用する方法を述べているのが Paul Tough Helping Children Succeed: What Works and Why (2016年)です。ここでは子どもが幼い時からの家庭環境や対人関係の重要性や社会的な支援の必要性が示されています。

 

GritやGrowth Mindsetは一般的にnoncognitive skills(非認知的能力)と呼ばれています。cognitive skill(認知的能力)は知能や学業成績ですが、それに対して自己制御(セルフコントロール)能力、自尊感情、対人関係能力などが否認知的能力と言われるものです。アメリカでこのような側面が注目されている背景には、21世紀に入ってからの教育政策で、学力が強調されてきたことがあります。ブッシュ政権で成立したNo Child Left Behind Act やオバマ政権のRace to the Top政策は、子どもの学力を保障するという旗印を掲げて、全国共通カリキュラムの設定、国語と算数についての標準テストの実施、学校・教員評価の強化などを進めてきました。しかしその結果、限られた教科の学業成績だけが強調され、同時に人種民族、地域、経済状況による格差の拡大が見られました。

ペーパーテストで子どもや学校を競わせても、本当の学力向上にはつながらないというのが明らかになってきており、特にマイノリティーの子どもについては、学力以前の課題が大きいことが指摘されています。

grit やgrowth mindsetが強調されるのは、子どもに学ぶことへの意欲を持たせたり、自分の人生の目的を考えさせることこそ、学校と社会が行うべきことだという判断があるのではないかと考えます。

以上はアメリカの話ですが、日本ではどうでしょうか? 教育の状況はかなり違いますが、「意欲を育てる」という課題が大切であることは共通しているように思われます。

 

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(TO)