日文公開講座🏫皆様から頂いた質問にお答えします(終)

10/1(土)に行われた日文公開講座「日本語 食うか喰われるか」
いよいよ最終回。皆様から頂いたご質問にお答えしていきます。

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Q:とても興味深いお話をありがとうございました。 「いただく」の次に今後、さらにお行儀のよい表現が登場する可能性はありますか? また、私は大学の日本語学専攻なのですが、日本語についてフィールドワーク(現地調査・使用実態調査)をやりたいという願望があります。しかし、私の大学の専科ではこの手法はあまり隆盛ではありません。どこかでできる機会はありますか?もしくは、やっている方はいらっしゃいますか?
A:可能性自体は常にあります。人間一人分の時間で経験できる変化・経験できない変化それぞれありますが、これからの時間で「いただく」が今よりも軽い表現になっていく変化は経験できるかもしれません。もしかしたら、そのころに新しい表現が見られるかもしれません。言語を研究していると、「この先、こういうことが起こるかもしれないから観察しておこう」と思うことがどんどん増えていきます。そう思っていると、これからの日々を生きていくのが、ちょっとだけ楽しみになりますよ。それからフィールドワーク。日本語学という分野全体として、まだあまり盛んでないともいえますが、この分野の特性ゆえに、自分ひとりでも、どこでもできる方法があるとも言えます。「この機材揃えてここにいかないと化石が発掘できない」とかいうのと違いますから。まず大事なのは、いま自分がいるこの環境でなにができるかな、って考えることだと思います。その方が楽しいし現実的。何か趣味を始めようと思ったときに、一通り道具をそろえてからやるよりも、最低限の道具や手元にある物の代用でやってみて、それから必要なものをそろえていった方が本当に必要な道具が見える、っていう感覚に近いです。手元にあるもの・・・大学内でもいろいろな地方の出身の学生が集まっていればちょっとした方言調査は出来ますし、街を歩いていて、気になる看板を写真に撮っておくのもフィールドワークです(私、こういう作業をほぼ趣味としてやってます。日常的にこういうことやってる日本語学者、多そう)。方法を学ぶ・覚えるというのではなく、方法自体を考えることができるのもこの分野の魅力ですし、そうやって実際に方法を試して方向性が見えてはじめて、やりたい方法をより突き詰められる環境を探すこともできるはずです。学んだ方法を適用するのではなく、方法自体をまず自分で作れる、ということこそが、この分野の魅力だと思います。(嶺田)

Q:「息子と母と料理とコミュニケーション」でお話された先生に質問です。このような調査分析でどのような研究につなげていらっしゃるのでしょうか。初歩的なお伺いで大変恐縮ですが、お時間がありましたらお教えいただけましたらら幸いです。
A:ご質問ありがとうございます。
きっと他にも「これを集めてどうするの?」「これってコミュニケーションの形なの?」と思われた方もいらっしゃると思います。
他の先生方のお話にあったような「歴史的な変遷」に視座を置く研究を「通時的研究」と言い、「ある一定の時期」に視座を置く研究を「共時的研究」と言います。今回の私が紹介した視点は後者にあたるかと思います。
「え?これが研究になるの?」といったような皆さんの“当たり前すぎる”日常のやり取りは、言語資源として後世にとって大変貴重な資源となります。
その言語資源をどう研究に用いるか。その一つとして、私自身は2013年以降のLINEのやり取りを、約200名の方々から頂戴したデータの集積、コーパスを作成しました。
今回はその中から、人間にとって欠かせない「食」をテーマに、ある共働き家庭の母親と息子さんのやり取りの一部を、ある児童の「言語生活」という視点から紹介しました。
分析の視点としては、語彙や文法、言語行動、非言語行動(を補填するもの)、会話分析(との比較)など、従来の書物や調査を対象とした研究と同じように、様々な視点からの分析が可能です。
これらはもちろん、通時的研究の一部としても寄与するものと考えています。(宮嵜)

Q:それぞれの研究に進もうと思ったきっかけを教えていただきたいです。
A:大学で方言研究をしている先生と出会い、「これが研究になるんだ、おもしろそう」と思ったのがきっかけです(嶺田)
なんとなくモノを作ることが好きだったのですが、この分野との出会いは大学1年のとき、一般教養科目で取った日本語学の科目で文法を扱っていて、論理を構築するという形での「モノを作る面白さ」に触れたことです。ただ、「この道に進むぞ」って明確に決意したかと言うと・・・迷いながら、いつの間にか、というのが正直なところだったりします(須永)
高校時代には「ことばに関わる仕事に就きたい」と思っていましたが、弱弱しいものでした。その後すぐ「文字だけの即時的なコミュニケーション」に自身が困る時代がきましたが、そんなことが研究になるのかと、大学での研究とは別に考えてました。当時国立国語研究所でアルバイトをしていたのですが、そこで出会った先生や専門分野を越えて出会った先生方に様々な研究の視点を教えていただき、色眼鏡の濃さが少し薄くなり…。その後も迷いに迷ってこの道に進ませてもらっている、という感じです(宮嵜)
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いかがでしたでしょうか。3回に渡ってQ&Aをご紹介してきました。
1回目:https://content.swu.ac.jp/nichibun-blog/2022/10/07/s-05/
2回目:https://content.swu.ac.jp/nichibun-blog/2022/10/19/s-06/

たくさんのご質問をいただきありがとうございました。
日文公開講座は来年度も開催予定です。
また皆様にお会いできる日を楽しみにしております☺

(清水)