<日文便り>
11月16日(水)女性教養講座において、角田光代さんと対談しました。
角田さんは「対岸の彼女」で直木賞を受賞、近年の大きな仕事として『新訳源氏物語』全三巻刊行、その後パラリンピックや海外ボランティアを題材に自分の使命・才能・生きる道を追求していく小説『タラント』を今年の2月に刊行、現在は「方舟を燃やす」を「週刊新潮」に連載中です。
ボクシングをずっと続けていて、フルマラソンを15回も完走、海外のひとり旅(ツアーではなく!)も何十カ国と出かけていらっしゃるタフな方なので、さぞかしがっちりとした体格の……と思っていましたが、真珠のネックレスに水玉のスカートがとてもよくお似合いの、ふわりとしたやさしい印象の方でした。
けれども経験豊富で、苦難の道をくぐり抜けてこられただけあり、そのお話は単に幅が広いだけではなく、奥行きの深さを感じさせるものでした。
作家を志望された経緯や、作家であり続ける信念、小説の題材を見出すアンテナのこと、現在連載中の「方舟を燃やす」のテーマなどうかがいましたが、どれも引きこまれるものがあり、お話しし足りない気分でした。私の対談の後、一緒に登壇した学生4人から『源氏物語』について、ボランティアについて、恋について、既成の映画等から小説を書くことについてなど質問がありましたが、ひとつひとつとても丁寧に答えて下さいました。
角田さんのお話の中で私がいちばん感銘を受けたのは、「本はすべて面白いとの先入観を持つ」ということでした。簡単に再現すると、
「どうしても入り込めない、つまらないと感じてしまう本は、今の自分に合わないだけ、今の時期に向いてないだけと思ってよけておき、また後で読んでみる。」
「少し前は〈わからない本=面白い本〉だった。自分の想像や理解をはるかに超えているのだから。今は〈わからない=つまらない〉になってしまっている。わからないという面白いジャンルの本と思ってほしい」。
女性教養講座は学生のための講座ですが、誰よりも私が学ばせていただいた、貴重な機会でした。
(笛木美佳)