〈日文便り〉
幼い頃、「備えあればうれいなし」を「備えあればうれしいな」だと勘違いし、準備をしっかりしていれば楽しく過ごせるのだ、と家族に自慢げに披露したところ、大笑いされたことがあります。
はからずももとの意味と遠からずではありますが、「うれい【憂・愁・患】(辛いこと、心配、悲しみ、嘆き、わずらい)」という複雑な感情をまだ知らない子どもだったからこその思い違いで、「うれしいな」と楽しそうに言えた軽やかさが懐かしくもあります。
受験生のみなさんは今まさに受験勉強に励み、備えている時期かと思います。成績がのびて楽しくなってきた方もいれば、なかなか成果があがらないと憂えている方もいるかもしれません。
日本の受験では、詰め込み式の学習が必要になり、それには賛否両論ありますが、受験のためだけのものだと思わなければ、頭が柔らかいうちに多くのことを覚えることにも意味はあると思います。
記憶というものは不思議なもので、若い頃に覚えたことの方が鮮明に、かつしっかりと定着しているものです。わたしの周りでも大人になってからだと、新たに覚えたことは、数年、下手をすると数日で忘れてしまうという声をよく聞きます。
もちろん現在はPCやスマートフォンさえあえば何でもすぐに調べられる時代ですが、知識は荷物になりません。今向き合っている学びが、受験だけのためでなく、自分を豊かにするものだと思って、欲張って抱えてみてください。
「備えあれば憂いなし」。準備がしてあれば、万一の事態が起きても心配いりません。
みなさんの準備が実を結び、みなさんの望む道へと繋がることを心より願っています。
(鵜飼祐江)