演習ⅡR(近世文学)紹介

〈日文便り〉

近世文学は高校までの国語・古典で扱われることが少なく、そもそもくずし字の状態から活字化されていない作品が圧倒的多数を占めます。
近世文学ゼミでは、近世文学研究の手法を実践的に学びつつ、くずし字の読解力向上にも取り組んでいます。
演習発表では、自分の担当範囲がどのような内容なのかを示す「梗概」、分からない言葉を調べる「語注」、発表者ならではの視点が光る「考察」、最後に「参考文献」という形でレジュメを作り、口頭発表を行います。ゼミ内では、発表者が作成したレジュメを踏まえながら、様々な意見が飛び交います。

 

「なんか蛇から龍になるって、江戸あるあるだよね」
「これ、道成寺伝説じゃない? 物語の舞台も和歌山だし」
「『雨月物語』にも同じ展開があったよね」

 

何気ない小さな意見から対象作品の分析が深まり、関連作品へと関心が広がっていく。
このゆるやかな知の繋がりが近世文学の魅力でもあります。
くずし字の読解では、現代人にも馴染み深いテーマの作品を選び、適宜読み進めます。

写真では、女性の化粧に関する内容を読んでいます。

 

「これは、に?ふ?」
「字が小さい。もっと大きく書け」
「今はやっちゃいけない化粧だよね、これ」
「いつの時代も化粧の悩みは変わらないね」

自分たちの力で、誰も読んだことのない作品に立ち向かう姿は、和気藹々としつつも真剣
そのものです。

近世文学は日文でしか学べない、日文ならではの学問領域の1つです。
演習を通じて、近世文学の世界を存分に愉しんでもらえればと願っています。

 

(荻原 大地)