授業紹介「世界の中の日本文学」

「世界の中の日本文学」では外部講師常田槙子氏を招いて授業を行いました。

受講者たちは、日本古典文学の外国への受容、翻訳の難しさ、文化的差異の翻訳への影響など理解を深めました。同時に日本語の美しさや日本文学の繊細な表現、ニュアンスを感じ取る感性なども学びました。

以下、受講者からのコメントです。

★日本語は本当に多様な豊かさを持つ言語なんだと感じた。自分が学んでいる言語や文学がいかに繊細でたくさんのニュアンスが含まれていて、色々な解釈ができるのかが分かり、これからもその豊かさを学んでいこうと思った。

★いくつかの英訳された例を見て、日本語の視点と英語での視点が変わってしまう点、「I」などの主語だけで日本語の持つ様々な主語、主体の持つニュアンスに対応しきれていない点、和歌の掛詞の訳について、など、日本文学の持つ全てのニュアンスを維持したまま外国語に訳するのは難しいのだと思った。

★和歌の翻訳は日本語に比べて、情報量の差がかなりあると思った。歌は書かない美しさ、曖昧さによる余韻が良さにある印象があったが、翻訳版で読んだ読者はその和歌をどう感じたのか気になった。

★衣食住のみならず多岐に亘って様々な平安時代の文化が描かれる「源氏物語」であるが、今回の特別講義を経て、宮廷世界や芸術面のみながらず、性的描写にも他国との文化の相違が示されているという視点があることに気付かされた。

★末松謙澄訳の中で、常田先生が例として挙げていた空蝉の部分、夜に寝所へと忍び込み空蝉が衣を脱いで逃げる場面は、当時のイギリスでは性的でタブー視されていた。これをお茶会のような場面でスカーフを置いていくという場面に変換していて、性的な部分をうまく隠しつつ、できる限り近しいニュアンスにしているのがとても面白いと感じた。

★アーサー・ウェリーという翻訳者の名前は聞いたことがあったが、日本語に再訳されていることまでは知らなかった。常田先生も仰っていたが、改めて「源氏物語」は特殊な作品なのだと思った。「源氏物語」では、教養があることは女性としての魅力のひとつであると描かれているが、それをいち早くフェミニストの主張として取り入れた人がいると知り、面白いと思った。