〈日文便り〉
与謝野晶子書簡からみる晶子の日常
学生と「国立国語研究所主催 言語資源WS 2024」で発表を行いました
受験生の皆さんは、どのような仕事を目指して大学を、そして学部・学科を選択しているのでしょうか。
全国的な就職率の高さで本学、本学科への入学を目指す受験生も少なくないと思います。
■大学院、という選択肢
ここ数年、将来的な仕事の選択肢のひとつとして、2年生以上の学生から大学院への進学を相談されることがありました。ただ今年は、「基礎演習」という1年次前期に履修する科目で、20人中2人も「大学院を目指している」との自己紹介がありました。大学院進学を視野に、本学科に入学してくる学生も増えているようです。
実際、本学大学院や他学の大学院に進学する学生も毎年います。
学界、学会というと遠いどこかで何かが行われているのだろう、と、謎の多いところかと思いますが、今回は、2022年から発足した日文プロジェクト「昭和女子大学近代文庫所蔵 与謝野晶子書簡コーパス化プロジェクト(以下、本プロジェクト)」で行った学会発表について紹介させてください。
■日文独自のプロジェクト -日文ってどんなところ?-
「日文プロジェクト」は大学全体のプロジェクトとは別に、2016年から「学科の学びが社会とどうつながり、実学としてどう生かせるかを実践する」試みとして、いくつものプロジェクトを発足させ、成果を出してきました。
本プロジェクトもコロナ禍の2022年から発足し、延べ約40名の学生とともに、本学貴重書のうちのひとつ「与謝野晶子書簡」をコーパス化してきました。
「コ・コーパス?」いや、「プロジェクト??」という方も、「他にどんなプロジェクトがあるの?」「日文の大学生活ってどんな感じ?」「学園祭は?」という方も、下記サイトをご覧ください。また各プロジェクトの「関連リンク」を覗いてみると、過去のブログの写真も載っていますので、学科の雰囲気が伝わると思います。
【日文プロジェクト紹介ページ】2016年から現在進行中のプロジェクトまで_2024
*その他「与謝野晶子 コーパス」と入力すると、各メディアで紹介していただいた記事にアクセスできます。
■いざ!成果発表 -学際性から生まれる化学反応-
本プロジェクトは、「日文こそ!データサイエンス」の号令のもと、現在の言語研究方法の主流のひとつとなっている「コーパス」を、文学を専攻しようとする学生、言語学を専攻しようとする学生、日本語教育を専攻しようとする学生、それぞれがそれぞれの研究目的で使用することを視野に入れながら設計、構築してきました。
昨年度もその設計について、「国立国語研究所言語資源WS(lrw)2023」で発表しましたが、今年度はデータ整備もひと段落したところで、書簡全体からみる「晶子の晩年の師弟関係」、その関係性から書かれた「書簡内容の日常性」を、文学・言語学それぞれの視点からまとめ、発表を行いました。
以下はインタラクティブセッションの開始前の“1分間プレゼン”(本発表では何をやるのか、持ち時間1分で解説)時に使用したポスターです。
本コーパスはテキストデータだけでなく、デジタルアーカイブと連携されている点(与謝野書簡に関しては24年時点では残念ながら学内LAN専用です)でも非常に先駆的であり、その点も発表時にアピールしました。
■実際に触れるということ
研究のためには、各自が実際に“やって”みないとわからないことが多々あります。実際本コーパスもマイナーチェンジを続けています。
本プロジェクトは「与謝野晶子の字は達筆すぎる…」という難題からスタートしました。そういった実際の筆跡に触れることができたのは、本学デジタルアーカイブの存在があったからです。図書館では現物にも触れましたが、当然ですがその難しさは変わりませんでした。
文字の判別が難しいという問題は、1991年当時本学教員であった杉本邦子・大塚豊子両氏により「翻刻」された研究成果があり、今回の電子コーパス化の際にも私たちに多くのものを与えてくださいました。
ただし、研究のためには「翻刻」に頼るだけではなく、各自が現物をしっかり確認する必要があります。実際に触れてみないと気づかないことが多々あるからです。
■新宿までタキシ(タクシー)にて御一緒に帰らん
今回テーマとした「特別な師弟関係」や、そこでやり取りされた「日常」などは、文章の記載箇所(上記ポスター内の〇で囲んだ部分など)、例えば手紙冒頭の余白であったり、写真から→を伸ばして走り書きをしたり、そういった情報があることでより説得性が増します。
本プロジェクトの成果報告のもうひとつの方法として、本学近代文化研究所紀要への投稿があります。22年度時点での設計については紀要19号にて報告しましたが、学会報告から少し進めた研究報告などは同誌にて来年度以降報告を予定しています。誰でもオンラインで読むことができます。
有名歌人で子沢山、その思想も100年以上経ってなお語り継がれる与謝野晶子ですが、そんな「“晶子”って普段どんなことを考えて生活していたの?」とちょっとでも思った方、読まないまでも、眺めてみてください。
本書簡の多くは郵送ではなく「使い持参便」で送られたものが多いことも特徴であり、現代だったらまるでLINEで送るような「日常」が垣間見えます。
(宮嵜由美)
【本プロジェクト紹介ページ】
<動画>youtube:与謝野晶子書簡コーパス化プロジェクト22
<発足しました>昭和女子大学近代文庫所蔵『與謝野晶子未発表書簡』のコーパス化プロジェクト!
<企画展・学会発表>「昭和女子大学近代文庫所蔵『與謝野晶子書簡』コーパス化プロジェクト」活動報告2
<コロナ禍を越えて:学園祭>コロナ禍に受験生だった学生と秋桜祭 23年11月