〈日文便り〉
2020年からの新型コロナ感染拡大によるリモート授業が、もうずいぶん前のことのように感じます。まさか自宅から大学の講義やゼミをすることになるなんて、思ってもみないことでした。そして、リモートと対面とが混在し始めたころ、「対面授業」ということばが自然に使われ始めました。日本語を研究する者としては「おやっ」と思ったものです。対面がフツーなら、わざわざ「対面」などとは付けないはずです。でも「リモート」と区別するために「対面」が必要だったわけです。「対面授業」ということばも、そろそろ使われなくなりました。
私の授業は、多いときは90人ぐらいが受講します。大勢いると挙手して質問することもなかなかたいへんなので、疑問があったら、つぶやくことにしています。ときどき聞こえてくる「どういうこと?」「〇〇ってなんだっけ?」などなどのつぶやき。
これは、「対面授業」ならでは、だと思うのです。リモートでもChat機能などでつぶやくことはできましたが、やはり臨場感が違います。昨年度末、「音声と音韻」という授業の最終回近くになって、「結局、正解ってないってこと?」というつぶやきが聞こえました。「音声学」の授業は、ほとんど数学的に答えが出るものが多いのですが、そういうすきまを縫って、このつぶやきが聞こえたときに、私は、「学生、なかなかいいじゃん」と思いました。
受験生の皆さん、これから大学や学部・学科を決める時期に入ります。誰かに与えてもらう正解で満足するのではなく、自分で答えを(答えがあるかどうかは分かりませんが)追い求められる勉強ができる環境に身を投じるのもいいと思いませんか?
(嶺田明美)