「ICT」って何?_デジタルとアナログ

〈日文便り〉

「ICT機器の操作」授業風景

■ICTって何?‐「教えること」「教えられること」‐
「Information Communication Technology」

つまり、情報 伝達/通信 技術の頭文字をとった略語です。
横文字が並ぶとデジタルな感じが漂い、 そして、デジタルでサクサクっと一気に情報処理ができると「すごーい」と思う、「いや、私はできないから…」となんだかつまらない気持ちになる方もいるかもしれません。

ただし、ICT(情報伝達技術)は、何もデジタルのものに限りません。紙に鉛筆で書くことも立派な「情報伝達技術」です。

確かに、2020年代に生きる私たちは、自分の考えや想いをデジタルで出入力することを必要とされる機会が沢山あります。教育現場もそのひとつでしょう。

2024年8月26日付の朝日新聞には、「デジタル教科書 今春本格導入 「学び」は変わる?」と題した記事が載っており、その長所と課題が載っています。
記事では主に、生徒の習熟度やスピードに個別に対応できる点で「デジタル教科書」が教わる側、教える側双方に利点をもたらす事例が紹介されていました。

ただ、私たちが本当に「考え」「記憶」するために、デジタルだけでことが足りているでしょうか?
いえ、何も、「古いもの(アナログ)ほどすばらしい!」というわけではありません。

今回写真撮影に協力してくださった皆さんは、中学、高校の国語科の教員を目指す方々です。
生まれたときからデジタル端末に囲まれ、コロナ禍による突然のオンライン授業も体験してきました。つまり、デジタル教材で教わる側でもあった方々です。
教員になったあかつきには、授業で配布する(紙の)プリントの作成から、「デジタル教科書」まで、さまざまな「デジタル」を駆使し教える。さらには機器の使い方をも教える能力が必要とされます。

授業では、それら様々な「デジタル機器で教える」スキルだけでなく、「教えたい内容に適した伝達方法」を、「レジュメにメモ」を取って修得するスタイルをとっています。授業スタート時のスキルは様々なので、必要な情報を各自が取捨選択し、必要なことだけをメモしていきます。自分用の「トリセツ」を作るのです。

また、わからないことを積極的に教え合うようにもしています。時には上級生に1年生数人が一緒に解決方法を提案することもあります。まずは身近な人との「教えること」「教えられること」という経験を通して、自身のスキルをアップさせます。

あるニュース番組では、先に行われた小中学生対象の「全国学力テスト」の調査結果とその上位都道府県の教育方針について、専門家の松尾章弘氏が「タブレット教育の時代だが“書く指導”に力を入れている」とコメントしていました。

私たちも「教えること」「教えられること」を通して、デジタルとアナログのより良い使い方を探究し、より良い学習につなげることを目指しています。

■データをしっかりみること・触れること
余談ですが、私自身、大学での初めてのレポートからデジタルで作成し、提出することが当然だった時代に学生生活をスタートさせました。父親のパソコン好きや、自身の知りたいこと、アルバイト先でのちょっとしたご縁から、機械的に情報を処理することも少しは身に付けました。
ただ、当たり前のことですが、サクっとデータを処理することは、データに必要な情報を適宜付与し、みやすい形に整理した“ある段階”にすぎません。

そもそもサクっとデータを処理する前に、さぁ、このデータにどんな情報を付与したらいいだろうか。どんな風にしたらもっとよくデータや結果をみられるだろうか、そう考えながらデータに向き合う時間が必要です。
その時間がないと、大切なことを見逃してしまいます。

そうやって考えに考え抜いて処理したデータを、私自身、何なら紙に出力し、ペンを片手にデータに向き合う時間を大切にしています。
もっと熟達した先生も、紙に出力し、断片を切ったり貼ったりしながら整理し、自分なりのメモを残しながら研究を進めていらっしゃる姿を目にしたときは、なんだか嬉しい気持ちになりました。

みなさんも、例えばYoutubeやTikTokで目にした情報に、直に接した時の匂いや感触、温度にとてつもない感動を覚え、いつまでも忘れることなく記憶に残ることがあるかと思います。どんな時代になっても、それだけは変わらないことのような気がします。

(宮嵜由美)