〈日文便り〉
受験生の皆さん、こんにちは。
古典文学担当の山本晶子です。今日は私が研究している馬瀬狂言についてご紹介します。
皆さんは狂言と聞いて、どのような芸能かすぐに思い浮かべられますか。
授業で同じ質問をすると、日本の伝統芸能ということは知っていても、歌舞伎や能と情報が混ざってしまうようです。
狂言のことを簡単に説明すると、日常生活の一コマを笑いで描く、言わばコメディです。(「日常生活」といっても、室町時代の日常ですが、現代に通じるところがあります。)
馬瀬狂言は、三重県伊勢市の馬瀬町で行われている狂言ですが、その特徴は馬瀬町民の手で、長い間伝承されてきたことです。この馬瀬狂言を調査・研究するために、この地に30年近く通っています。今年も9月14日の町内の秋祭りで狂言公演があり、その様子を撮影しに訪れました。昨年は、この馬瀬狂言を紹介する日文プロジェクトを行い、馬瀬狂言を紹介するパンフレットの作成、また本学での狂言公演や馬瀬狂言資料展といったイベントが催されました。
プロジェクトで作成したパンフレットが置かれていました。
馬瀬町公民館の前には、櫓が組まれ、公民館の中と外で秋祭りが行われます。まずは伊勢神宮の式年遷宮の行事であるお木曳を担う奉曳団の木遣りの披露から始まりました。
この他のプログラムとして、よさこいや大正琴の演奏等があり、馬瀬狂言は「柿山伏」と「附子」の2曲が上演されました。
「柿山伏」は、旅の途中で空腹に耐えきれず、柿を盗み食いしていたところを柿の木の持ち主に見つかってしまった山伏の話、「附子」は「附子」が大変な毒(「附子」とは植物のトリカブトのことです)と主人から聞かされていた召使いたちが、それが実は砂糖であることを知って食べてしまうという話です。
公民館の会場では、小学生から高齢の方まで、用意された観客席が埋まる大盛況でした。1曲終わるごとに、舞台には多くのおひねり(小銭を紙に包んだもの)が投げ込まれ、公演は大きな拍手の中で幕を閉じました。
河原良治馬瀬狂言保存会会長から、昨年のプロジェクトの時のように、保存会会員の方と本学学生との交流ができればというお話をいただきました。昨年は、保存会の方が大学にいらっしゃり、またプロジェクトの学生が馬瀬町を訪問する等、双方向での交流の機会がありました。地域で伝統芸能がどのように伝承されているのか、実際に活動に携わっている方からお話を聞くことは、日本の伝統文化に対する理解をより深める機会となります。今後、こうした交流の場を企画して実現していきたいと思います。
日本語日本文学科の学びは、資料を読み込み、分析する学びもあれば、こうしたフィールドワークでの学びもあります。教室での授業以外にも様々なプログラムが用意されているので、自分の興味にあったものを選び、自身の学びの世界を広げ、また深めていきましょう。
(山本晶子)