2020年7月10日 学長ブログ

<学部長インタビュー>
グローバルビジネス学部長の武川恵子先生にお聞きしました。

■プロフィール
小原: まずは、武川先生の専門分野やこの大学でどういう分野やテーマで研究や活動をされているのかを教えてください。
武川: 昨年から本学のグローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科に勤めています。私は国家公務員出身ですが、ビジネスの分野との関りとしては1989年にアメリカのデューク大学経営大学院で修士号を取得しました。また、内閣府の男女共同参画局にいた2010年に日本でAPECが開催され、「女性と経済」に関するフォーラムが行われて以来、内閣府では女性と経済に関する政策に力を入れ始めました。そして2012年安倍内閣が発足し女性の活躍推進の政策が打ち出され、女性と経済に関する政策を実現してきました。また、現在、2社の社外役員もしており、そういう面では経済やビジネス分野に関係しています。
一方、日本には、21世紀の現代からみるととんでもない政策の枠組みがまだ残っています。これからやりたいことは、政策に携わった者として、そして今は大学教員なので自由な立場で、これらの問題提起を文章でしっかり発信していきたいと思っています。特に家族法に関して問題が多く、考え方の座標軸に明治民法の出来た19世紀当時のものが残っています。たとえば、女性が出産した場合、法律上の夫を父親の欄に記さなければ出生届は受理されません。それを覆す否認権は法律上の夫にしか与えられていません。制定当時は夫のいる女性の婚外の関係は罪とされていました。また、婚外子の父としての認知に母の同意は胎児認知以外は必要ありません。父親の法律上の妻の同意などもちろん必要ありません。さらに、両親が離別した場合、こどもの養育費を支払っている男性は日本では20%であり、取り立てしやすくなるよう制度改正はされてきていますが、基本的には民民で解決すべき問題という位置づけで公的介入はありません。正当な父親を確定し、責任を取らせることは国家の義務という考えに立っている諸外国もありますが、日本ではそうなっていません。これ以外にも、女性に関する様々な問題があります。本学でビジネスの教育に携わりながら、一方でこれらの残された問題を提起していきたいと思っています。

小原: 先生のこれまでの活動のなかで、やりがいがあったと感じていることを教えてください。
武川: 私は、人は社会を少しでも良くして次世代に渡していく責任があると思っています。そのなかでやりがいがあったことの一つは、2016年の女性活躍推進法の施行です。それに付随して、公共調達(公共事業など、政府がサービスやものを購入すること)の入札時に、4兆円程度の予算ですが、女性が活躍している企業に加点することを実現させました。これは女性が活躍できる機会を増やそうとしている企業へのインセンティブになっていると思います。また、政治分野で「候補者男女均等法」が議員立法ですが成立したことも嬉しかったことです。この他、身近な事例ですが、「液体ミルク」の製造販売が実現したことです。液体ミルクを厚生労働省の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(通称:乳等省令)のリストに加えるための申請を日本乳業協会に提案したところ、当時の日本乳業協会会長である川村氏(現、株式会社 明治 代表取締役社長)が引き受けてくれて実現しました。
小原: 液体ミルクがリストに載ることはどのような具体的なメリットがあるのでしょうか?
武川: このリストに入っていないものは、事実上製造販売は不可能で、当時は粉末ミルクしかなかったのです。液体ミルクが販売されると、夜中でも外出先でもまた、災害時でも、水や湯を準備してミルクを作る手間がいらず、慣れていない父親や他の誰でも手軽にミルクを与えることができ育児が楽になるため、結果的に育児支援となります。
小原: 先生の趣味や特技はどんなことでしょう?
武川: 園芸でしょうか。私は家事の一環と思っていますが、家族には趣味と思われています。これはなかなか奥が深いです。木を植えて、それがなかなか発育しなくても後になってちゃんと育つものもある一方、いくら良い苗でも適所に植えないとうまく育ちません。以前、鉢植えの藤に、冬に水を切らしてしまったところ、春に全く花が咲きませんでした。そこで地面に移したところ、今度は伸びてすごく枝をはったので、翌春棚いっぱいに花が咲くのを楽しみにしていたのですが、咲きませんでした。冬でも世話をし、枝も張り過ぎないようにしないと花は咲きません。また、手間ばかりかかる木でも親の植えた木はなかなか切れないということもあります。ビジネスに通じますね。

■大学について
小原: グローバルビジネス学部ではどのような人材を育成したいとお考えですか?
武川: 社会の責任ある構成員になれる人を育成し、次世代のために少しでも社会をよくしていくことに加わってもらいたいと思います。「世の光になろう」という言葉にも通じますね。人生は長いから、荒波に遭っても強く乗り越えて明るく幸福な人生を、学生には送ってもらいたいと思います。このためには、社会で役に立つ基礎知識を、グローバルビジネス学部では必須のビジネスの力をつけて、臨機応変に変化に対応できる力をつけてもらいたいと思います。
小原: 昭和女子大学のセールスポイントはどんなところだとお考えですか?
武川: こじんまりとして家庭的で面倒見がよいところかなと思います。昭和女子大学では、女子学生に立派な社会人になってもらいたいという、若い女性に対する期待感をもって教育がなされていると思います。人は期待されると伸びると思います。
小原: 今までお聴きしてきましたが、武川先生からおっしゃりたいことがあればお願いします。
武川: 会計ファイナンス学科は資格をしっかり取らせることを重視しています。ビジネスデザイン学科はプロジェクト型教育(PBL)を先駆的に取り組んでいます。グローバルビジネス学部では、以前は一般入試で入学した学生のほうが概して良い成績を取る傾向が見られたのですが、現在は推薦入学してきた学生に成績がよく生きいきと活動している人が多いです。そういう学生がリーダーとなって引っ張ってくれると好循環が生まれると思います。本学は昭和ボストンがあることも強みですが、テンプル大学ジャパンキャンパスとの関係もさらに強化していきたいと思います。このように、本学はダイナミックに活動し、動いています。ますますよりよい大学になっていくと思うので、学生もこの動きに是非参加してほしいと思います。

---小原の感想---
初めて武川先生と直接話を伺いました。このインタビューでは、先生は、女性にとって不平等な政策や法を是正し、社会をより良くして次世代につないでいくことへの責任を強く感じられている点が印象的でしたが、その一方で学生を見る視点には教育者としての慈愛を感じました。現在の民法の問題点は他にももっと指摘されていたのですが、書ききれなかったので、これに興味をもたれた人は是非、武川先生の講義や講演を聴講されることをお勧めします。

次回は、人間社会学部長の藤崎春代先生をブログで紹介する予定です。ご期待ください。

<関連リンク>
武川恵子教授の教員紹介ページ
学科紹介ページ(ビジネスデザイン学科)
学科紹介ページ(会計ファイナンス学科)