2022年4月20日学長ブログ

 先日、本学の国際文化研究所が2021年度日本イコモス奨励賞を受賞しました。受賞理由は「ベトナムの町並み保存支援と日本の町並み保存団体等との交流促進等長年にわたる文化財保存国際協力活動におけるすべての人々の努力を讃える」でした。そのなかの前半の功績はホイアンの町並み保存活動です。この町並みが良好に保存されたこともあり、ホイアンは世界遺産に登録されています。ホイアンは16,17世紀には日本や中国、インド、アフリカ、ヨーロッパなどの交易の要所として栄え、往時は日本人も住んでいました。そのため、ホイアンのなかにはかつては日本人町があり、今でも魅力的なアーチ形の日本橋があります。都ではありませんが古都の風情がただよう町です。国際文化研究所のこのプロジェクトは10年以上前から継続されており、建築だけではなく衣・食分野のグループも共に調査・保存活動に参加しています。
 私も10年以上衣服グループのメンバーとして、ベトナムの伝統的衣服の調査に参加してきました。ベトナムには、日本のように系統立った「被服学」はないため、伝統衣服、特に庶民の日常的な伝統衣服についてはその形や着装法等の正確な記録が残ることもなく、現代の衣服はほぼ欧米化しています。しかもベトナムでは人が死亡するとその衣服もすべて燃やしてしまう慣習があり、衣服を永く保管・保存することは少ないようです。そこで我が衣服グループでは、ベトナムの公的機関の方の援助のもとで日常的な伝統衣服を調査し、記録しながら、その調査記録の手法や伝統を保存する意義も伝えてきました。
 長い年月の地道な活動が日本イコモス委員会に評価されたことも嬉しいですが、伝統的な建築物や生活文化を保存することの意義がベトナム現地の人々に認識され、伝統文化の保存活動につなげていただければ、プロジェクトとしては望外の喜びと思います。


(2015年ホイアンのランタン祭にて:夜の川面に浮かぶ大型のランタン)

(同じくホイアンのランタン祭にて:街角でランタンを売る夜店)