手漉き紙のつづき

 私の受け持ちの授業で文化財保存学基礎があります。
私は奈良時代の絵入り教典「絵因果経」の模写と、ウィンドウマットへの固定の実技と
日本画の材料、作品保存の方法としてのマッティングなどの講義とで構成しています。
 模写をする紙は、ガンピという木の樹皮に含まれている繊維で漉いた紙です。繪具は
色の付いた岩を細かく砕いた顔料と動物の皮などから取れる膠とを指先で十分に練って
から使います。ガンピの紙ですが、それはきめが細かく滑らかなので昔から珍重されて
いましたが、16-17世紀にはオランダにも輸出され、有名なレンブラントが銅版画を
雁皮紙ガンピシに刷っています。インクの含みが適当な所を利用して、当時の西洋手漉き
紙とは違う仕上がりをしています。現代の版画家は殆ど1種類の紙しか使わないのに
レンブラントは東洋の紙数種類を試して、それぞれの紙による効果を活かした作品として
います。意欲的ですね。皆さんも一度画集でレンブラントの版画を見て下さい。作品解説に
和紙とかいてあるのも見つけることができますよ。増田勝彦