こんにちは、日本近現代史担当の松田忍です。
夏頃にもブログで書いた安積得也文書整理会。昨日休日を利用して再び開催いたしました。
開催場所は史料を保管している国際基督教大学。とても美しい紅葉が楽しめました。いい季節ですよねぇ。
昭和女子大学の学生とあわせて全部で10名での史料整理会となりました。
「一つの史料が発見されたから、教科書が書き換わる!!」などというドラマのようなことは起こりませんが、史料調査していると、しみじみとした感情にとらわれることがあります。
昨日発見された史料の一部紹介。下の写真は、鳥取県で地歴科の教員をつとめていた人物が、安積得也(当時・岡山県知事)に対して出した手紙の一部です。出されたのは1945年10月です。
手紙のこの部分には以下のような真剣な問いかけがなされています。
どうか御多忙の折とは存じますが、御指導の程、切にお願い申上ます。
一、大東亜戦争は正しい戦ひであったと考へられますか。
一、敗戦後の歴史教育に如何なる希望を持ったらいいでせうか。
一、今後教育者の特に心掛けねばならぬ点。
手紙の前後からは「国体(天皇を中心とする国のありかた)」は不滅であると信じ戦争を戦ってきたのに、敗戦という結果に陥り、価値観が激しく揺さぶられ苦悩し、面識のない安積への手紙を書くにいたった教員の姿が現れていました。この教員は安積が出版した詩集に感動し、「この人の考えを聞きたい!」と思って手紙を出したようです。安積は返信を返したのでしょうか?返したとするならばなんと返したのでしょうか?その手紙は発見されていません。とても気になるところです。
さて、もう一つ昨日発見された史料。晩年の安積得也は招待されると小学校を訪問して、いろいろな話をして回ったようです。上記の手紙の束とは、別の史料の束からは、話をしてくれた安積に対して子どもたちが書いた可愛い寄せ書きが発見されました(下の写真)。これは1990年前後の史料でつい最近のものですね。
生の史料を整理するなかで、「歴史のイメージを書き換えたり、補強したりする史料」が見つかるともちろん嬉しいのですが、それ以前にかつて生きた人の人生に触れる楽しさというのは圧倒的です。ああ、安積得也という人間はたしかに人と触れあいながら生きていたのだなぁ、と気づけること。
それは心を温かくしてくれる経験だなぁと思った次第です。