田植えの季節

日本芸能史、いえ今回は日本民俗学の大谷津早苗です。
私は、田植えの季節に生まれたので早苗(さなえ→苗代から田に移すころの若い苗)という名になったそうです。
今回、私が生まれ育った栃木県北部の田植えについて聞書きをしました。

話者は田植えの経験がある同地在住の女性(昭和10年12月16日生まれ、79才)、調査日は平成27年5月26日。以下の※は筆者注

経験したのはいつごろ?
→中学生の時に手伝ったことがある。→※昭和22~25年

その頃の田植えの時期は?
→6月初めから中旬くらい。今は早くなって5月の連休あたりだが。

どんな仕事をした?
→ハナトリ(※鼻とりか)をさせられたことがある。

ハナトリとは?
→田植え前の代掻きの時、田んぼに入れた牛の鼻を引いて歩かせること。牛の後ろには鋤を付けて。父親が牛の後ろについていてくれた。ハナトリは体の小さな少女には難しく、牛を同じところばかり歩かせてしまい、父親からダメだしされた。馬を使う家もあったが牛の方がゆっくり歩くのでよい。

田植えの日数と田植えをする人は?
→2~3日。朝6時に田んぼに集合し16時くらいまで。10時にコジハン(※朝食と昼食の間に食べる簡単な食事か)、14時に昼食を食べた。初日は赤飯を炊いた。稲を植える人は10人くらい。女性。絣のもんぺを着た。早乙女と言っていた。早乙女と苗運びや補植をする男性は近所で代々懇意にしている決まった家の人たち。田植えは〝ユイでする〟。→※共同作業。それぞれの家の田を共同で植えていく。ユイ=結。

 

〔聞書きを終えて〕
現在の田植えは機械で行われていますが、戦後まで牛を使った伝統的な田植えが行われていたようです。〝ユイでする〟という言い方が残っていたことにも驚きました。
このようにふつうに繰り返されてきた生活の様子や知恵、考え方を聞き取って資料とするのが民俗学です。普通の生活の歴史が見えてきます。