望秀海浜学寮にいってきました!

こんにちは、松田忍です。

2017年10月24日から27日まで、望秀海浜学寮にて、1年生、3年生合同の学寮研修をおこないました。

歴文の学寮では2015年から3年連続で「KJ法+ディベート大会」をおこなっています。「調べる力」「考える力」は充分に持っている歴文生の「議論する力」をもっと鍛えたいとの思惑で始めました。。

昨年までは、学生の側のみならず、教職員の側でもはじめて取り組むことになるディベートの段取りづくりに手探り状態でありました。しかし3年目の今年になって、歴文の学寮の軸となる学科プログラムとして定着した感がありました。学年を超えて混じり合いながら充実した表情で議論している学生たちの様子や、終わってから口々に「ディベートやって良かった」「またやりたい」といっているのを聞き、ここまでブレずにやってきて良かったなぁと心底思っております。

今年のディベートのお題は「ジェンダークォータ制の導入、是か非か」といたしました。ジェンダークォータ制とは、選挙における議席などに対し、一定割合の女性をつけるように法的に規制する制度のことを指します。企業役員の一定割合を女性にすることなども指しますね。女性の社会進出を法的に進めるのか、自然の趨勢に任せるのか、学生の皆さんが将来どのような社会で生きていきたいのか、たくさんの問いが交錯するこの問題に対し、歴文1・3年生全員が真剣に取り組みました。

作業開始にあたっては「歴文生」であることの強みを意識するように指示を出しました。すなわち「資料に基づいた根拠のある議論をする力」「他国の歴史を踏まえた議論をする力」「過去の歴史を知った上で、未来像をイメージする力」が歴文生にはあるはずなので、歴文生にしかできない戦い方をしてほしいとのメッセージを伝えます。

各グループとも学寮出発前に相当な準備をして臨みましたが、実質的なディベート大会の開始は学寮2日目の夜からです。まずはクォータ制の賛否の根拠となる事実を付箋にどんどん書いていき、グループ内で論点を共有していきます(KJ法)。

そして付箋を模造紙に貼り付け整理して、議論しながら論点を整理していきます。各グループの議論の様子。写真を整理して思ったのですが、学生たちがとにかく「カッコいい」んです!!!

3年生は必修授業「歴史文化と社会」の中で一度ディベートを体験しているので、ディベート準備のやり方に慣れています。3年生のリードに従いながら、1年生も積極的に発言していきます。次の5枚の写真で発言したり、動いていたりするのは全部1年生です。やっぱり「カッコいい」でしょ!!

さらに各グループの主張を模造紙にまとめ、一旦プレゼンをおこないます。

そして、いよいよディベート本番!!夏から準備してきた大量の資料を用意しての「データの殴り合い」です笑 「絶対にふわふわした議論にしてはいけない!数字や根拠を示して議論せよ!」とのアドバイスを各グループとも忠実に守り、相手チームの論点をひっくりかえす様々な数字が飛び交います。でてくる外国の事例も、アメリカ、ドイツ、フランス、ルワンダ、韓国・・・と多彩です。

ちょっと議論のなかみをのぞき見してみましょう!

「昇進したくない女性が大量にいることを示すこのデータをみてください、昇進できない理由を問う質問に対する答えとしては、確かに『育児の環境が整っていないから昇進したくても責任を引き受けられない』と答える女性が1位ですが、2位、3位には『昇進する働き方を望んでいない』『昇進するメリットが感じられない』の回答が並んでいるんですよ。昇進したくない女性に無理に昇進させるのは間違っていると思いませんか?」

「女性が責任を引き受けないというのは、女性が一歩引いてきた日本の歴史が作ってきた意識だと思います。クォータ制が導入されれば、男性だけではなく女性の意識も変わってくるし、変わらないと男女平等の未来も、日本が経済発展していく未来も訪れないと思うんです。」

「クォータ制を採用している国では女性運動が先頭になって制度の導入を求めてきた歴史があります。しかし日本では国連などの圧力によって、主に男たちの手によって、導入の是非が論じられている。このままの流れで、外見だけ外国と同じ制度が導入されても、結局は男性たちに利用される女性像に変化がないんじゃないでしょうか?」

「育児や家庭が女性の問題だと考えること自体が間違っていると思いませんか?育児が女性の問題だからクォーター制が必要なのではなく、家庭が男女両性の問題だからこそ、幸福な家庭のありかたを男女で話し合うことを推進するクォータ制が必要だと思うんです。」

「内閣に1人女性入れておけばそれでよい、3人も入れればなんとなく良いことをしている感じで報道されるのはそもそも女性の数が著しく制限された『見えざるクォータ制』ではないですか?まずは『見えざるクォータ制』を『見えるクォータ制』にしなければならないし、その上で女性の割合を引き上げることでしか、国民の意識はかわらないのではないでしょうか」

いやぁ~、面白いですね!!

賛否それぞれの立場からの立論がなされると、次は各グループごとの作戦タイムです。資料をみんなで確認して、もう一度討論のポイントを練り直し、相手の議論のスキをつくデータを探します。

中央に座っている2名が「裁判官」役の学生です。クォータ制賛成派と反対派の間に立って、ディベートを取り仕切ります。今年のディベート大会成功の立役者でもあります。どのグループの裁判官も、議論を傍観するのではなく、積極的に論点を整理し、賛成派と反対派の議論がかみあうようにうまく介入していました。全員が「司会の初心者」であるので、うまくいく場合もそうじゃない場合もある。しかし全員が議論を成立させるために自分が頑張らねばならないという責任感をもって臨んでくれました!

討論が終わると、裁判官2名で議論の勝ち負けを協議し、それぞれのチームの良かった点、悪かった点を比較した上で判決を下します。

ディベート大会が終わると、最後は学生の互選で「ディベート準備及びディベートを一番頑張った学生」を選び、MVPとして表彰しました。今年の互選傾向は票がかなりばらけたことでありまして、裁判官や1年生にも多数の票が入り、多くの学生がディベートに前向きに参加したことが伝わって参りました。そんななかでさらに抜きんでて受賞した皆さんは本当に立派だと思います!

こういう企画は参加者全員が気持ちの面でのってこないとうまくいかない面があります。

与えられた機会を最大限利用して、自分たちの学びの場としてくださった学生のみなさんに心から感謝いたします。