特殊研究講座が開催されました

みなさんこんにちは。日本考古学ゼミ3年の今井優花と大槻紗也夏です。
2022年6月8日(水)に開催された、歴史文化学科の特殊研究講座についてご紹介します。

今回は、松蔭大学教授の小林克先生をお招きし、「ティー・チョコレート・コーヒー―考古学からみる17世紀以降のホットであまい飲物―」という演題で、講演をしていただきました。

みなさんは、近世に考古学があるというイメージをお持ちですか?

実は、考古学は縄文から古墳時代のものだけではなく、江戸時代の大名屋敷や城郭なども対象になるのです。
近世の遺跡からは、発掘調査によって生活文化の実態が判明します。

今回は、江戸遺跡と出土資料から見た茶・コーヒー・チョコレートをお話しくださいました。

江戸遺跡には、現在の私たちの生活と大きく関わっているものが発掘されています。
その1つが、汐留遺跡から出土した上水井戸です。
なぜ、木製でできた上水井戸が残っているのでしょうか。埋立地であった汐留は、水が残っており有機物も残りやすかったのです。

また、当時の暮らしでも、灯明皿が土で作られていたり、土器も利用されていたことがわかります。
その他にも江戸遺跡からは、一般使いであった陶器類、高級品が多い磁器など、今の生活とも関わっている物が出土しています。

講演の後半には今回のメインでもあるホットであまい飲み物の歴史について発掘された陶磁器と17世紀の絵画の視点からお話をしてくださいました。
日本に陶磁器が広まったのは17世紀であり、それまでは中国産のものがほとんどでした。

しかし、中国で王朝交代の内乱などが起こったことにより磁器の輸出が止まると国内でも磁器が生産されるようになりました。

また、陶磁器に代表されるティーカップやソーサーなどはヨーロッパが主体だと思われがちですが、意外にも17世紀ヨーロッパではそれらは生産されておらず、中国から輸入されたものを使用していました。
それは当時のヨーロッパに温かい飲み物を飲む習慣がなかったためです。

本格的にこの温かい飲み物を飲む習慣がヨーロッパで広まるのは17世紀後半以降のことであり、アフリカ・アラビア半島でコーヒー、中南米でチョコレートが生産され、それと同時に世界商品として砂糖が流通するようになり、世界中に温かくあまい飲み物が拡大していきました。

また、中国や日本製のカップ&ソーサーも大量にもたらされるようになり、オランダのアムステルダムからは中国製のチョコレートカップやカップ&ソーサーが出土しています。
チョコレートカップは文字通りチョコレートを飲むためのカップであり紅茶においても当時のヨーロッパでは労働者階級の人々がソーサーの方でお茶を飲む文化があったりと現在のお茶文化からは想像もつかないことが行われていたと考えると「どのように現在のかたちに変化したのか」などたくさんの疑問が湧いてきてとても興味深いですね。

 

 講演後には全体として質疑応答の時間を設けられなかったので個別で質問をしたり先生が実際に持ってきてくださったチョコレートカップなどを近くで見せていただきました。
どの質問にも熱心に答えてくださり、また、貴重な資料を実際に手に取って見ることが出来てとてもいい経験でした。

 

小林先生、この度はお忙しい中、誠にありがとうございました。