文化財保存学担当の田中です。今年度をもって昭和女子大学を退職させて頂くことになりました。入校から丸6年が経ちますが、学内外の様々な活動を通して学生の皆さんと日々接するなかで、本当に豊かで楽しく充実した日々を過ごさせて頂きました。心より御礼申し上げます。
今回、4年生と一緒のタイミングで昭和女子大学を卒業させて頂くということで、久し振りに対面で卒業式に参加しました。小原学長先生による式辞ならびに坂東理事長・総長先生の告辞を拝聴し、身が引き締まる思いがすると共に、昭和女子大学に勤務できたことの喜びをしみじみと感じました。小原先生は、日々の地道な努力の大切さと、自分の為だけでなく他人や社会にも貢献できるような高潔な精神をもつことの必要性について述べられたうえで、大きく変化する社会の中で、その時々に必要なことを学び続け自分をバージョンアップしていってほしいと仰っていました。坂東先生は、前代未聞・想定外のコロナ禍での学生達の日々の頑張りを称えたうえで、人生において想定外や困難を避けることは出来ないが、危機は自分を成長させるチャンスでもあるので、正直で素直でいること、良いことをして、知らないことを知るように、出来ないことを出来るようにして人生に対する自分の努力に期待することが大切であると熱く語られました。昭和女子大学は、第一次大戦後の荒廃した世界の中で、戦争と破壊ではなく平和と文化を構築する女性の育成を目的に設立されましたが、両先生のお話の根底に流れる「世の光となろう」という建学の精神について改めて考えさせられました。
私自身、長く辛いコロナ禍を経た現在、この建学の精神は、より一層重要性と重みを増していると感じています。ここ半年ほど、私がとても嬉しくそして心強く思っているのは、コロナ禍を経験し内に籠ることの多かった学生の皆さんが、ここにきてこれまで以上の好奇心をもって外への活動を再開していることです。学芸員課程の授業の中で毎年、興味のある博物館に実際に足を運んで温湿度や照明のリサーチをして授業で発表をする課題を課しているのですが、例年はキャンパスメンバーズに入っている都内の特定の美術館に調査先が集中していました。ところが今年は、40名以上いる履修者の調査先が見事に異なっていて、地方や海外の博物館や私の知らなかった博物館もあり、そのバラエティの豊かさに驚かされました。また、再開したボストン留学(短期・長期)も夏・冬共にこれまでにない希望者の多さで、学生の皆さんの学びへの強い意欲と逞しさを感じました。皆さんのその熱意に少しでも応えられたらと、現地の先生方と相談のうえMFA(ボストン美術館)の知り合いにお願いし、私の方で新しく出来た修復センターの見学をアレンジしました。
困難なことはまだあるかもしれませんが、学生の皆さんには、臆せずいろいろなことにチャレンジし、豊かで実り多い学生生活を過ごしてほしいと願っています。
また今回の退職を機に、卒業生何人かが連絡をくれたり大学に会いに来てくれたりしたのですが、苦楽を共にしたゼミ生達が、今は社会に出て元気に活躍している様子を知ることが出来たのは大きな喜びでした。何人かは、あの大学時代があるから今がある、という話もしてくれました。
改めて、昭和女子大学で、皆さんと人生の貴重な時間を共に過ごすことが出来たこと、本当に嬉しく思っています。1つ1つの出会い・思い出に感謝の気持ちで一杯です。4月から私は新しい大学に着任いたしますが、この6年間を心の糧に、更に精進していきたいと思っています。「世の光になろう」という言葉を胸に。なお、後任の先生が着任されるまで、来年度は非常勤講師として歴文の授業(ゼミ等)を担当させて頂く予定です。ですので、在校生の皆さんには、学内でまたお目に掛かれたら嬉しく思っています。