昭和女子大学戦後史史料を後世に伝えるプロジェクト顧問の松田忍(日本近現代史)です。
このブログでもお伝えしておりました通り、5月25日、26日と明治学院大学にて、巡回展「被爆者たちが望む未来 あなたが望む未来 ―「原爆被害者の基本要求」を読む」を開催いたしました。
2日間を通じて約170名の来場者にいらして頂きましたが、特に熱気に包まれたのが、26日14時からおこなったミニ・シンポ「「原爆被害者の基本要求」を読み解く」でした。予想を超えて30名を越える方がお見えになり、会場に用意した席が埋まり、追加の席を用意するほどでした。
ミニ・シンポでは1984年に日本原水爆被害者団体協議会が策定した「原爆被害者の基本要求」の歴史的位置、策定プロセス、論理構造をそれぞれ検討する発表を私たちがおこなった後、長谷野新奈さん(立教大学卒業生)が豊かな知見から「基本要求」の内容の見どころについて補って下さり、高原孝生先生(明治学院大学国際学部名誉教授)が核を巡る現在の世界情勢を踏まえながら、「基本要求」の位置づけをして下さいました。長谷野さん、高原先生、本当にありがとうございました!
私たちは、「原爆被害者の基本要求」が多くの被爆者から寄せられたハガキやアンケートを踏まえて作成されたことを指摘した上で、さまざまな角度から出された被爆者の意見が、「基本要求」策定プロセスにおいて徐々に明確な形を取るようになり、最終的には①とにかく原爆が憎い、だから②謝罪してほしい、そして③償ってほしい、と整理され、④2度と繰り返さないために行動することこそが真の「償い」である、と訴えるに至る過程を明らかにしました。
多くの被爆者から寄せられた意見は、論理というよりも魂からの「叫び」であったわけなのですが、みんなの「叫び」を集めて民主的に話しあい続けることで、論理構成を取った「基本要求」の内容が仕上がっていくのが本当に素晴らしいと思いました。そして出来上がった「基本要求」をみたときに、「私の言いたかったことはこれだ」と多くの被爆者たちが受けとめた事実も興味深いところです。被爆者自身も議論したり勉強したりしながら、自分の「想い」に「形」を与えていったんだなぁと感じました。
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さて戦後史PJは2018年から活動しています。これまでも数多くのイベントにお招き頂いてプレゼンをしたり、展示会のギャラリートークをしたことは何度もあったわけですが、シンポの形で研究成果を公表したことははじめてでした。「せっかく巡回展やるんだったら、同じことの繰り返しじゃつまらないんじゃない?シンポやってみようぜ!」と私がけしかけたときには、「シンポ」の名前の重さに若干腰が引けている学生もいました。
しかし会場設営から、コメンテーターの方への依頼、そして報告内容の調整に至るまで、最終的に学生たちは全部やってのけました!!当日になって「プログラム用紙を印刷しなきゃ!」とか「ああ、アンケート用紙用意してなかった!」とかの不備もありましたが笑、それもまた学生プロジェクト!一回失敗したら、その場は「ごめんなさい」して、次に生かせばいいわけですので。
成功も失敗も体験できる昭和女子のプロジェクトはいいなぁと、学生たちの姿をみながら改めて思いました。
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シンポが終了したのは15時15分でしたが、その後戸塚まつりが終わる16時まで、多くのお客さんが会場に止まり、パネルを見たり、私たちに話しかけて下さったり、人の輪が途切れなかったことも印象的でした。お客さん同士で名刺交換をなさっていたり、話が弾んでいたこともとても良かったと思います。
この写真は、左から長谷野さん、栗原淑江さん(ノーモアヒバクシャ記憶遺産を継承する会)、濱住治郎さん(日本被団協・継承する会)そして当プロジェクトの1年生メンバーです。
関係したみなさま、ご来場下さったみなさま、誠にありがとうございました!
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巡回展もおわり、次は11月の秋桜祭展示に向けて、新しい研究活動のスタートです。元気な1年生たちも多数入ってくれており、今年も戦後史PJ頑張っていきます!