2015年度 方法論「心理実験法実習B」

心理実験法実習Bは、学部3, 4年生を対象に心理学で行う実験法をより専門的に学ぶ実習科目です。前期金曜の1, 2講時に行われていて、受講生は11名と少人数です。この授業はProject based learningの要素が強く、研究計画に基づき心理学実験の実施、分析を行います。授業時間外に多くの時間を割いて活動する一方で、授業時間に学生が教室にいないこともしばしばです。さぼっているわけではありません。大学の各所で実験しているのです。

 

 

心理学実験とは聞き慣れない言葉だと思います。心理学実験は、自然科学の実験と同じように、複数の条件を設定して何らかの測定を行い、測定値を条件間で比較する作業です。検討対象が動物、特に人間なので特別な倫理配慮が必要となります。そのため、授業当初は心理学実験に関するレクチャーを受け、実験協力者への配慮も含めた科学研究の倫理について学びます。研究倫理に精通することが実習の前提となっています。

心理学実験では、実験室へ実験協力者に来ていただきます。この実験協力者のリクルートから実験のスケジューリングもすべて受講生が行います。呼びかけややり取りに失礼があったら協力してもらえません。ダブルブッキングなどスケジューリングに誤りがあると大変な迷惑をかけることになります。社会人基礎力が問われる瞬間です。その一方で、土壇場でキャンセルを受けたり、連絡なしで現れなかったりで(“No show”といいます)、世間の冷たさを知る瞬間でもあります。

心理学の実験は40〜80名の実験協力者に対して「個別に」実施します。そのため、一つの実験におよそ1ヶ月を要します。先ほど、「授業時間外に多くの時間を割いて活動する一方で、授業時間に学生が教室にいないこともしばしば」と書きましたが、受講生は空いている時間を全て使って実験を実施します。受講生は他の授業も履修しているので時間確保に苦慮しながら実習を進めていきます。

実験は、社会心理学の先行研究を元に計画を立て、実施します。6月には「解釈レベルの差異が他者評価推論の正確性に及ぼす影響」と「認知資源が誘惑への自己制御に及ぼす影響」について検討しました。実験では、コンピュータを使って刺激を呈示したり、反応時間を測定したりします。時には、様々な商品から欲しい物を選択してもらうことも行います。端から見ると何をしたいのかよくわからないだろうと思うのですが、実施している側は大真面目です。

 

 

実習では、実験データを集めるだけではなく、データを整理、分析することも行います。データは全て数値化され、統計処理を行います。統計学の知識が必要です。また、個人情報を扱っているので、流出がないように細心の注意を払ってデータを扱います。このようにして心理学実験の基本を学ぶと同時に、社会人として必須の感覚を養っています。

 

 

受講生は「正直ツライ」といいながら実習を進めていますが、明るく元気に頑張っています。自分自身にとっても、心理学の研究にとっても得られる物が多いと思います。

(藤島喜嗣)