平成28年度 授業紹介01:発達心理学

心理学研究の中で、繰り返し検討されてきているテーマの一つが「ひとの個人差は遺伝によって決まるのか、環境によって決まるのか」という問題です。1年生の必修授業の『発達心理学』では、入学して最初の授業テーマとして、遺伝―環境論争を取りあげました。

授業では、<心理学では、このテーマをどのような研究方法を用いて検討しようとしてきたのか>という視点から紹介しますが、それに先立って、宿題として、①自分はこの論争について、どちらの立場をとるか、②周囲の誰か一人(できれば、学生ではなく、年齢の離れているひとが望ましい)にも、どちらの立場をとるか尋ねる、を課したうえで、授業中にグループ討論をしました。

グループ討論では、「ひとの個人差は遺伝によって決まるのか、環境によって決まるのか」についての意見交換のみでなく、自分たちの考えの正しさを実証するための研究計画立案も試みました。

 

授業の後半は、グループで話し合ったことを、全体で共有するために、発表してもらいました。1年生ながら、堂々と発表する姿を、頼もしいと感じました。

 

入学してまだまもなく、最初は緊張していたようですが、自分と異なる考え方に接して、刺激を受け、途中からは皆楽しそうに議論をしていました。討論後の感想文を読むと、自分の考えを意識化すること、自分とは異なる人の意見を聞いたこと、そして、研究計画を立てる試みをしたことは、大学での学びのウォーミングアップになったようです。

 

討論についての感想をいくつか紹介します。

「環境派が絶対に多いと思っていたのに、意外にも遺伝派もたくさんいて驚きました。最初は堅苦しい授業だと思いましたが、楽しめそうです。」

「宿題で、遺伝か環境かについて考えたとき、自分の経験から考えていたが、今回ディスカッションでニュースに関連させて考えてきた人がいて、何かを考えるときには、自分の経験だけでなく、周りからも探せるようにしていきたいと思った。」

「自分とは違う意見を聞いて、人それぞれ考え方が違って面白いなと思いました。・・・(中略)・・・人に意見を伝えるのは、難しいなと思いました。」

「皆で討論することで自分の考えていたモヤモヤがはっきりしてきたり、異なる意見に賛同できたり、さまざまな発見があり、楽しかった。」

「今まで私が行ってきたディスカッションというのは、案を出し合ったうえでひとつにまとめあげていくという形式が多かったが、今回は、ひとつにまとめ上げるよりも、自分にはない他者の意見を取り入れていくことで、自分の知識や考え方の幅を広げることができました。答えがはっきりとわかっていない問題の議論はとても新鮮で、型にとらわれずに自分の意見を言ったり他人の意見を吸収したりすることができてよかった」

「最初、個人差は環境的要因しかない、と思っていた私にとって、さまざまな意見を聞くことができてよかったです。また、発達心理学の内容は、一言では簡単にいえない、白黒つけられない問題が多いのかもしれないと思いました。」

 

受講生の中には、他学科の学生もいます。他学科生の感想は、心理学科の学びの特徴を端的に表しているように思います。

「私は、他学科生でしたので、心理学科で行う授業方法や内容に新鮮さを感じました。特に、先生が「心理学は実証科学である」とおっしゃっていたことが印象的でした。私の所属する歴史文化学科では、実物をどのように解釈するのかといった内容について調査することが多いので、方法そのものを探していく心理学科の調べ方が新鮮でした。」

                           (授業担当者:藤崎春代)