平成28年度 特殊研究講座 「犯罪心理学」 大渕憲一 東北大学名誉教授

10月29日(土)、大渕憲一東北大学名誉教授をお招きして、特殊研究講座「犯罪心理学」が開催されました。

第一部は「無差別殺人の心理」を取り上げ、国内外の有名な事件を紹介して、犯人が無差別殺人を犯すメカニズムが解説されました。ぞっとするような殺伐とした事件ばかりでしたが、大渕先生の穏やかな語り口が救いでした。大阪教育大学附属池田小学校の事件のお話をされた際には、大渕先生ご自身が大阪教育大学で教鞭をとった経験がおありだったため、他人ごとではなく、大きな衝撃を受けたとのことでした。慢性的なストレスが自己破壊衝動を生み、無差別殺人の引き金になるというお話を伺うと、ストレスへの対処の重要性が改めて感じられました。


「犯罪心理学」という演題から、無差別殺人の心理の解明で終わるかと思っておりましたら、第二部は「非暴力文化の醸成」という内容でした。犯罪の予防のために、さまざまな防犯の取り組みが行われておりますが、大渕先生が提起されたのは、非暴力文化を醸成することによって暴力犯罪が減少するだろうという巨視的な見通しでした。そして非暴力文化の醸成というのは、何も特別なことをするのではなく、私たちの社会が大切にしているもの、例えば教育や民主主義をしっかりと機能させ継承していくことに他ならないという大渕先生の結論は、非常に印象的でした。

(今城周造)