心理学科では心理学の主要4領域(「認知」「発達」「臨床」「社会」)を幅広く学べるのが特色ですが,心理学には特定の対象や年齢層を対象とするより専門的な分野もあります。
心理学科では心理学の主要4領域(「認知」「発達」「臨床」「社会」)が学べるカリキュラムを用意していますが,心理学には特定の対象や年齢層を対象にしたより専門的な分野もあります。 今回,臨床心理学・青年心理学が専門の増淵裕子先生に,「青年[…]
心理学科では心理学の主要4領域(「認知」「発達」「臨床」「社会」)が学べるカリキュラムを用意していますが,心理学には特定の対象や年齢層を対象にしたより専門的な分野もあります。 前回は青年心理学の特集記事を公開しました。 [sit[…]
今回,睡眠の臨床心理学が専門の村山 憲男先生に,「睡眠の臨床心理学」の魅力やゼミの活動を紹介する特集記事を書いてもらいました。
「睡眠の臨床心理学」も本学心理学科で学べる特色ある分野の1つです。進路を検討する上でぜひ参考にしてください😊
睡眠は、こころやからだの健康にとても重要な役割を担っています。一方で、日本人は世界的にみて最も睡眠時間が短いことが報告されています。
私の研究室では、眠る/眠らないことで心理的にどのような影響が出るか?、ちゃんと睡眠をとるためにはどうしたらいいか?などを、臨床心理学の立場から研究しています。
以前に私は北里大学に勤めていましたが、その際、睡眠の専門医である田ヶ谷浩邦先生がリーダーの研究室に所属しており、そこで睡眠の重要性や面白さを知りました。
また、睡眠の研究に携わる前は、レビー小体型認知症という認知症で3番目に多い原因疾患を対象にした研究を行ってきました。この疾患は、前駆状態としてレム睡眠行動障害(夢と連動して体が実際に動いてしまう症状)が現れやすくなります。睡眠、夢、体の動きの関係は、未だに謎が残る不思議な現象です。
さらに、本学に着任した後、ゼミ生と一緒に大学生を対象にした睡眠の調査をしたところ、睡眠不足の学生が全体の60%ほどいることが示唆され、学生の教育や心身の健康を考える上でも睡眠の重要性を改めて認識しました。
現在、ゼミ生とともに進めている研究をいくつか紹介します。
睡眠とストレス:
ここ数日に生じているストレス反応の強さは、睡眠とレジリエンス(心理的な回復力)で40%程度説明できることが明らかになりました。
この研究は2022年度のゼミ生の卒業論文であり、データを再分析して投稿した研究が2023年にSleep and Biological Rhythmsに掲載されました(Tomioka, et al. 2023)。詳しくは以下のブログ記事をご参照ください。当ゼミ生は、現在、この続編となる研究を進めています。
2022年度に本学心理学科を卒業し、現在、本学心理学専攻(修士課程)に在学中の冨岡美良さんの研究が、国際学術誌「Slee…
入眠困難と入眠時認知活動:
「ふとんのなかで考え事をしていたら眠れなくなってしまった…😖」という経験はありませんか?このように、眠るとき(入眠時)に考え事をしてしまうことを入眠時認知活動といい、入眠を妨げる要因として注目されています。
現在、ゼミ生とこの関係を深掘りする研究を進めており、学術誌への投稿も目指しています。
睡眠不足と作業量やエラー数:
睡眠不足の状態では作業量が低下し、エラー数が増えることが報告されています(チェルノブイリやスリーマイル島の原発事故も睡眠不足が原因といわれています)。
睡眠不足によって生じる作業量やエラー数の変化を、特に臨床心理学的な技術を活用して評価できないか?ということについて、現在、ゼミ生とともに研究の準備を進めています。興味深い結果が得られたら、こちらも学術誌に投稿したいと思います。
その他:
私のゼミではこのほかに、たとえば、二度寝や、食欲と睡眠、音楽と睡眠、気力と睡眠など、睡眠に関する研究をゼミ生ならではの自由な発想で進めてもらっています。
特に二度寝は、このせいで学校に遅刻してしまうこともある困った現象ですが、あるゼミ生(就職して現在はOG)は「二度寝の心地よさ」というポジティブな面にも着目した研究を行いました。とても面白い視点だと思いますので、今後のゼミ生達と一緒にいずれまた研究を行いたいと思っています。
睡眠は社会的に注目を集めていることもあり、お勧めの本はたくさんあります。
一般向けの本では「睡眠こそ最強の解決策である」(Matthew Walker 著,桜田直美 訳)はお勧めです。
また、睡眠を心理学の視点からまとめている専門書として、「心理学と睡眠:睡眠研究へのいざない」(江戸川大学睡眠研究所 編)や「睡眠心理学」(堀忠雄 編著)、「夢と睡眠の心理学:認知行動療法からのアプローチ」(松田英子 著)などがお勧めです。
動画については、睡眠研究の世界的な第一人者でありノーベル賞候補(2023年現在)といわれている筑波大学の柳沢正史先生は、睡眠に関する知見を積極的に発信しています。とても面白く、分かりやすいお話をされる先生ですので、たとえばYouTubeで「柳沢 睡眠」などで動画検索してみることをお勧めします(以下で1つ紹介します)。
睡眠を削って勉強するのを良いことと考えている受験生がいたら、それは大きな間違いです。
大学受験という大切な時期こそ、学習効率やパフォーマンスの向上のために、睡眠をよくとることが重要です。
もし睡眠が十分にとれていないなら、まずは日常の生活リズムから見直してみて下さい。
1日のスケジュールを、「やるべきことをやって、あとの残りの時間を睡眠にあてる」と考えている人が多いかもしれませんが、勉強(や仕事)をしっかりこなすためには、「まず睡眠に必要な時間をちゃんと確保した上で、残りの時間の範囲内でできることをやる」くらいに考えることをお勧めします。
(心理学科・村山 憲男)
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