【英コミ教員記事】金子弥生先生:『不思議の国のアリス』(1865)に出てくるウミガメスープのお話

『不思議の国のアリス』(1865)には、作者キャロルが創造した“Mockturtle”という不思議な生き物が登場します。 “mock”の意味は「にせの」で、“Mockturtle”は「ニセウミガメ」です。実は、 “turtle soup”とはウミガメスープで、庶民は食べられない高級品です。そこで、ウミガメの代わりに仔牛を使って作られたのが“mock-turtle soup”です。ここから生まれたのが、顔と後ろ脚としっぽが仔牛の“Mockturtle”です。このニセウミガメは物語の中で「ウミガメスープ」の歌を歌います。

「ウミガメスープ」は20世紀デンマークの作家、アイザック・ディネーセン原作の映画『バベットの晩餐会』(1987)に登場します。訳あってパリから逃れて老姉妹の元に身を寄せたバベットが毎年買っていた宝くじがある時大当たりし、村人を招いて晩餐会を開きます。ウミガメ等、見たこともない食材が運ばれるのを見た村人たちは、晩餐会に行く約束をしたものの、あんなものを食べたら天罰が当たると思いこみ、食事の話はしないことにして晩餐会に参加します。しかし、彼女の料理を食べると、おいしくておいしくて何か言いたいのですが、食事の話はしない約束のため、何も言うことができません。それでもバベットのおいしい料理は村人たちのかたくなな心をほぐし、皆笑顔になると言うお話です。

ことばにこだわると、色々なことが見えてきます。