宮本みち子先生(放送大学名誉教授/千葉大学名誉教授)をお招きし、「子ども・若者の権利と子ども・若者政策」というテーマでご講演いただきました。
宮本先生は、社会保障審議会委員、中央教育審議会委員、こども政策の推進に係る有識者会議構成員、子どもの貧困対策に関する検討会座長等を歴任され、現在は首都圏わかものサポートネットワークの委員長、千葉こども基本条例検討委員会会長をされています。
研究と社会活動としては、生活保障論、若者政策、生活困窮・孤立・孤独等の問題について取り組まれています。
宮本先生のお話を受け、本講演を受講した福祉社会学科の学生より寄せられた感想を一部、ご紹介いたします。
・経済的な貧困だけでなく、心理的・社会的な孤立も深刻だと思います。SNSの普及により、常に繋がっているように見えても、実際には誰にも悩みを打ち明けられず、一人で問題を抱えてしまっている若者が多いことも問題です。家庭や学校、職場など、かつての居場所が機能しなくなり、心の拠り所を失っている子どもも多いことが分かりました。
・児童虐待にフォーカスしていたが、「虐待は大人になって終わりじゃない」という部分が印象的だった。アンケートから子どもの本音や気持ちがたくさん綴られており、深刻な現状を知ることができた。その子どもたちにもまた貧困の連鎖が起こる可能性が高い。長らく問題になっている貧困の連鎖をどのように食い止めるかが課題であり、私たちも福祉職を学ぶ身として考える必要があると改めて感じることができた。
・児童虐待を経験した若者たちの声の中で「今も悪夢を見る自分の状況を理解して欲しかった。」という意見が印象に残っている。虐待は子ども時代におきることであって親から虐待を受けない環境になり自立できる年齢になればある程度解決できると考えていた自分に気がつき虐待の問題は子ども時代だけでなく大人になってからも継続した精神面のケアを行い続ける必要があることを学んだ。
・現在の日本は、子どもや若者のために大人が支援しているつもりであり、反対に子どもは大人に対して意見を表明しているつもりであって、大人の世界と子どもの世界がそれぞれ孤立してこのような結果になってしまっているのではないかと考えた。子どもの意欲を保つためには学校教育として、自分には自分を守るための権利があるということを学ばせる必要があると考える。それだけでなく、自分の意見を表明していいんだよという機会を実際に体験することで若者が政治に関心をもち、現段階で孤立してしまっている大人の世界との繋がりがうまれるのではないかと思う。
・この講義を通して私は、「子どもや若者の声を聴くこと」が本当の支援の出発点であるという大切な視点を学んだ。支援者側の都合や視点ではなく、当事者である子どもや若者の目線に立ち、何が必要で何に困っているのかを丁寧に理解する姿勢が重要だと感じた。将来、子どもや若者と関わる仕事に就きたい私にとって、この学びは非常に大きな意味を持っている。今後も「聴く力」を大切にし、寄り添い続けることのできる支援者を目指して、自分にできることを一つずつ積み重ねていきたい。
宮本先生、ご講演いただき、ありがとうございました!