現代教養学科の田中です。
私からはコンピュータ関係の歴史を知ることが出来る本を2冊紹介します。
「実物でたどるコンピュータの歴史 (東京理科大学 坊っちゃん科学シリーズ)」 竹内 伸 (著), 東京理科大学出版センター (編集) 東京書籍 (2012/8/27)
2番目に紹介する「僕らのパソコン30年史」と同じような内容の本だと思って買ったのですが、この構成はいったいどういうことなんだろう? この「第1章 計算機の発達 1.数を数える、計算する 2.計算尺…」、コンピュータどころじゃ無いよね? 次の章になっても「第2章 計算雑具の時代 1.そろばん以前の計算道具…」、第2章の2節でそろばんが出てくる…「中国の占い用そろばん」って初めて見たよ。何故に円形なんだ?使い方がさっぱり分からない? コンピュータがやっと出てくるのが第4章。そして次の第5章で終わり。おまけで家庭用ゲーム機の変遷が少々。
そして、これで面白くないかというとやたらと面白いんです。 博物館で展示を順に眺めているように引き込まれていきます。「ほほぉこれがこうなるわけか」的な面白さ。はじめの方の章の「計算とは?」はコンピュータの基本的な動作の原理につながる知識をわかりやすく解説することにつながっている。なるほど構成に無駄が無い。ひとつひとつの解説は簡潔で字数は少ない、ちょっと物足りない程度。そのかわりに豊富なカラー写真でイメージがしやすい。何だろう? 読者の想像で読ませていく本なのかな。ほとんどのページに写真やイラストが入っています。
新書版、本文136ページ、軽く薄めの本で手に取りやすく社会学系の学生でも読みやすいので、情報学に興味のある学生は教養として一読してみてははどうでしょう。
「僕らのパソコン30年史 ニッポン パソコンクロニクル 」 SE編集部 (著, 編集) 翔泳社 (2010/5/29)
Amazonのレビューで、どなたかが「40代以上の方は おすすめです。」と書いてあって、20才前後の大学生に勧めて良いものかと思いましたが、観点を変えて紹介したいと思います。ちなみに「40代以上の~」にはまったく同意!です。
タイトルに「史」と付いている以上当たり前ですが、各章が5~10年区切りの時代ごとに分かれています。年代ごとにエポックメーキングとなるような機材、技術、商品が事実のみ淡々と紹介されています。興味の無い人にはまったくつまらない本です。その時代を生きてきた私にはたまらない本です。
ちなみに第3章「1986~1990年 PCと一太郎の時代」からが私的リアルタイムになります。なぜかというとそれ以前のコンピュータはものすごく高額で個人が持つなんて夢のような話だったのです。大学の電子計算機演習室で触りましたけど、それだけ。それがパソコン=PCが出現してからガラッと変わりました。大学生が夏休みいっぱいバイトのバイト代で「車を買おうか(中古車)」それとも「パソコンセットを買おうか」どうしよう?当時の理系男子大学生の悩みです。車を選ぶと彼女が出来ます(偏見あり)、PCを選ぶと秋葉原の住人まっしぐら(実体験)です。この本にはそんなアホの大学生の実体験は何も書いてありません。
私がなぜこの本を紹介するかといえば、わずか30年ちょっと前の話なので私のようにその時代を生きてきた者からすれば、ただの思い出話にすぎない内容なのですが、そろそろ本として纏めておかなければ消え去ってしまう事柄が書かれています。あの時代を知っている方々がお亡くなりになり始めているからです。もうすぐリアルで経験した人がいなくなります。授業でアーカイブズを取り上げることがありますが、「記録しておかなければならない」と分かっていながら、消えていく資料は本当に多いのです。消えていく理由の一つが当事者たちの「記憶しておくほどのことじゃないだろう」という意識にあることを個人的には痛感する本でした。
単行書版、本文256ページ、ちょっと大きくちょっと重い本です。家にいる機会の多い今だからこそ手を出せる本かも知れません。