現代教養学科には「エスニシティ論」という難しいイメージの科目があります。
「国家」「民族」「エスニシティ」ということばはこれまでも何気なく使っていましたが、正直その意味や本質が分かっていませんでした。この授業では、塩川伸明『民族とネイションーーナショナリズムという難問』(岩波新書)を使い、その内容に沿って調べ、発表をします。先生がそれにコメントし、要点をまとめ、また、学生の課題や質問にフィードバックします。この類の本は新書がたくさん並んだ図書館の棚で見てもなかなか手に取りづらく自分からは読みません。でも、この授業では自分が発表する部分は勿論のこと、他の学生が発表する分も読みこむので、講義や発表を聞きながら一冊読みこめば授業終了後に達成感が感じられるかなと今からワクワクしています。「民族」や「ナショナリズム」は難しいイメージがありましたが、『民族とネイション』は分かりやすく、発表する上でもまとめやすく心配無用でした!
先日から早速学生の発表が始まり、私はこの授業のもっとも基本的な概念である「エスニシティ」について、「民族」「国家」「国民」などの用語との関連でまとめ、プレゼンテーションをしましたが、「わかりやすかった」と履修生たちから好評でしたので、ここに「エスニシティ」という概念について簡単に紹介したいと思います。
「エスニシティ」は漢字語で「民族性」とも解釈されますが、そもそも「民族」が何かよく理解されていません。「民族」をただ説明し、定義してもわかりにくいです。「民族」についてもここに見るように「エスニシティ」や「国家」、「国民」に関連付けて説明するとわかりやすくなると思います。「エスニシティ」とはより厳密に言うと、血縁ないし先祖・言語・宗教・生活習慣・文化に関して「われわれは○○を共有する仲間だ!」という意識をもつ集団だと理解することができます。つまり、簡単に言うと「つながっているだろう」という漠然たる感覚をもつ集団です。そのため、明確な指標も存在せず、どのような集団がエスニシティかも確定できるものもありませんので、多義的、可変的、流動性、重層性とも表現できます。
このように、「エスニシティ」を図で表明すると次のようになると思います。
個々のエスニシティ集団は不確定ですが、それぞれの集団内では確固たる実在とみなされるような集団特性を持っています。
そして、「エスニシティ」を基盤として「われわれ」が一つの国、それに準ずる政治的単位をもつべき意識が広まったとき「民族」ができあがります。
逆に言うと、「民族」というのは自治や独立という強い政治意識をもつエスニック集団だと理解できます。「エスニシティ」について学んだから「民族」についても理解できたと思うと嬉しいです。しかし、どこまで、政治的一体感が強まったらエスニシティから「民族」になるのかという絶対的な基準はありませんが、独立ができれば「民族国家」(ネイション・ステート)が誕生して「国民」がつくられるから、ここで英語のネイションにあたる「民族」と「国民」が併存し、また「国家」が加わることで、「ネイション」がゴチャゴチャになってしまうから、日本語で「民族」はわかりにくいです。
今回は、「エスニシティ」、「民族」、「国民」などの概念についての発表でしたが、この後は世界の「国家」(近代国民国家)ごとに分けられたテーマから、国民国家の登場の実例を踏まえながらより詳しく「エスニシティ」について学べることが楽しみです。
みんなが調べてきた発表を聞くだけでなく、本を読んでも分からない部分は先生の講義とフィードバック資料から学ぶことで難しいテーマながらもこれまで知らなかった知識が身に付いています。私のこの授業での目標は『民族とネイション』の1冊を深く理解し、「民族」「エスニシティ」「ネイション」「ナショナリズム」というこれまで知っていても理解できていなかった用語を国際問題の実践で説明できるようにすることです!頑張ろうと思います。
フフバートルゼミ4年 飯坂