4回に分けてお伝えする2024年度社会調査研修、今回は3回目の投稿です。
前回の投稿は、
研修報告【社会調査研修2024】京都 (1) 非公開文化財で皇室ゆかりの文化を体感
研修報告【社会調査研修2024】京都 (2) 近代の文化に触れられる2つの施設を見学 を是非ご覧ください!
オープンキャンパスでも報告書の展示を予定しています。次回オープンキャンパスは6月22日です。ご来場をお待ちしております!
2024年度「社会調査研修」では、バス停調査と対外発表にも取り組みました。京都市内の路線バスでは、観光客と一般市民の利用が重なっているケースがあり、このような路線では恒常的な混雑が市民生活に深刻な影響を与えており、京都における「オーバーツーリズム」の一つの象徴的な課題となっています。私たちは、バス停での実地調査を通じて、いったいどの路線がどれくらい混雑しているのか、把握することを試みました。また、その調査結果を対外発表することにも挑戦しました。
【バス停調査】
社会調査研修の初日集合前の午前中に、有志で京都駅のバス停調査を行いました。京都市における観光客の集中の実態を把握し、時間的あるいは空間的な分散化を図ることを考える本研修プログラムの中では、実態把握のための調査に位置づけられます。
京都駅から各主要観光スポットへの観光客の動向を調査したところ、四条方面、祇園方面、清水寺方面に向かう観光客が多いことが分かりました。同時に観光客の大型荷物を調査したところ、大型荷物を持ってバスに乗車する観光客は比較的少ないように感じました。考察として、先に大型荷物をホテルに預けているか、コインロッカーを利用してなるべく荷物は最小限に抑えて京都市内を観光していると考えられます。
午後は東山付近で調査を行う予定でしたが、一つ前の研修プログラム中にゲリラ豪雨を避けて雨宿りして終了時刻が遅れたため、この日午後の調査は実施をやむを得ず中止することになりました。
研修2日目は、祇園と平安神宮の2箇所のバス停調査を実施しました。私が担当した平安神宮では、平安神宮の観光を終えた観光客が四条方面、京都駅方面へ移動していることが分かりました。このことから、観光を終えた観光客が①電車に乗り継ぐため、②滞在先のホテルへ向かうため、③食事をとるために、ホテルや飲食店の多い繁華街(四条・京都駅方面)へ向かっていると考えられます。1日目と同様に観光客の大型荷物も調査を行いました。平安神宮側では、大型荷物を持ってバス停に乗車する観光客はほとんど見受けられませんでした。
2日間のバス停調査を終えての考察です。京都市では、観光客と一般の方が気持ちよく公共交通機関を利用できるように、観光客の方に向けて「手ぶら観光」が推進されています。2日間の大型荷物の調査から、この「手ぶら観光」が観光客の中で浸透しつつあると考えられます。またバス車内には、大型荷物をまとめて置くことが可能なスペースが設置されていました。そのため、バス車内の混雑度が増し、周囲の乗客にとって危険な、大型荷物の持ち込みや通路妨害はそれほど多くないのではないかと考えられます。
また、202系統・206系統のバスが混雑することが分かりました。これらのバスは北大路バスターミナルや清水寺、京都駅、四条等の主要観光地または地下鉄などの鉄道路線に乗り換えることができるバス停、宿泊施設が密接している地域に向かうことができるため、混雑していることが考えられます。
混雑緩和のためには、1つの系統で主要観光地同士(清水寺方面と祇園方面)を結ばず、地元住民の通勤・通学流動の利便性を確保しながら、地下鉄などの鉄道を利用する観光客に促すようにするのが、観光客と一般の方が気持ちよく公共交通機関を利用できることにつながるのではないかと、この2日間のバス停調査を終えて感じました。
(大貫)
【京都府立大学での研究交流】
社会調査研修の最終日には、京都府立大学を訪問し、学生の皆さんと交流会を行いました。交流会では、まず両大学の学科の簡単な紹介が行われ、その後、私たち昭和女子大学の学生が今回の研修の狙いやそのプログラムについて報告を行いました。
バス停調査に関してはその調査項目やどの方面の移動で混雑が発生しているか、大型荷物の持ち込みがどれくらいあるかなど、調査結果のシートを見ながら議論しました。また非公開文化財を見学した感想を共有し、このような文化財を一般公開して観光地の混雑を分散化させることに向けた課題を京都府立大学の皆さんと意見交換しました。
研修期間に私たちが気づけなかったことや現地である京都の方々が日々感じていることなど、京都の文化や観光に関する学びがあり、実際に現地の同世代の方々とこうした話題を共有する貴重な機会となりました。
その後、京都府立大学の研究室から、社会調査に基づく研究事例として、関口先生から「ニュータウンの買い物弱者問題」について、大学院生から「空き家になりやすい住宅や所有者の特徴」についてご報告をいただきました。どちらも社会課題について、住民の方へのアンケート調査や既存の統計データなどを読み解いていく内容で、私たちの学科で社会調査士資格取得を目指している学生たちも学んでいる内容でした。一方で、私たちのような社会学的なアプローチと、関口先生たちのような工学的アプローチでは、同じ手法を使っていても調査の設計が少し異なることも知ることができました。
最後に、集合写真を撮影し、交流会は終了しました。今回京都府立大学の皆さんとの交流を通じて、新しい視点や学びを得ることができ、大変貴重な経験となりました。
(飯塚)
次回の第4弾では、私たちが対外発表を行ったときの様子をご報告します。