創立者人見記念講堂の第一緞帳は「躍動する光」というテーマで制作された作品であることを以前お話しました。そこには、霊峰富士、箱根の山、伊豆の海のはるか上空に、躍動するオーロラの光を受けて、3名の女性が世界に羽ばたいていく姿が織られています。
第二緞帳は「光葉の大樹」がテーマです。1980年の学報4月号には、そこに織り上げられている景色を「ほのぼのと輝き初める曙の薄桃色の空には無限の希望がひそみ、大地に根を張った大樹にはたくましい力量感がみなぎり、光輝く緑の若葉の群れには友情の温かさがあふれ(後略)」ている、と紹介しています。「光葉の大樹」は、無数の木の葉を手作りで制作し、それを緞帳に縫い付けて完成したもので、こうした制作法で、しかもこんなに大型のものは全国にその例を見ないのだそうです。
1978年の9月に緞帳制作委員会が発足して準備を始め、1979年8月1日から9月12日までの40日間、ほとんど毎日のように木の葉の刺繍が進められたことが、『昭和学園のこころ-創立90周年に寄せて-』(2011年 学園連携委員会)に環境デザイン学科の谷井教授が詳しく書かれています。この冊子は図書館にも収められていますので、是非、皆さんご覧下さい。刺繍の参加者は1,500名、刺繍する予定の木の葉の枚数は1,050枚ありました。私も一枚を刺繍しました。夏休み中のとても蒸し暑い温考館(現在の学園本部館のところにあった)の2階に同窓生がたくさん集まり、四方山話をしながらも作業の手は緩めることなく、一針一針、とても丁寧に刺繍していきました。私は、完成した緞帳の中から自分の葉が見つけ出せるようにと、葉の先が裏返っているものを選んだため、葉の表面と裏面の部分の刺繍糸や刺繍の方向が違っている上に、1枚の葉の大きさも思ったより大きく、仕上げるまでになかなか手間がかかったのを覚えています。
記念講堂の竣工式で、第二緞帳の「光葉の大樹」が下ろされた瞬間は、本当に感激でした。そして、自分の刺繍した葉を探したのですが……出来上がった緞帳を見ると、1,050枚の中には葉先が裏返っているものが何枚もあり、私が刺繍したのではないかという候補は数枚まで縛ってはみたのですが、とうとう自分の葉は発見できずに終わってしまいました。実は、今でも、私が刺繍したのはどの葉だったのか確証がありません。でも、どれも立派な大樹の一葉として、人々が憩える場所を織りなしていることに、とても満足しています。
(第二緞帳「光葉の大樹」)
ところで、この光葉の大樹は、光葉同窓会のシンボルマークにもなっています。平井聖名誉学長が同窓会からの強い要望を受けて作成してくださいました。同窓会旗、バッグ、一筆箋、絵葉書、など、色々な所にこのシンボルマークが使われています。大樹は大学。その幹は大地からの栄養分を、学科・学年という枝を通して、在学生にも卒業生にも提供し、その下には、いつでも誰でも疲れた時に憩うことのできる場所を作っています。
(光葉同窓会のシンボルマーク)