資料的に価値が高く、希少性が高い図書のことを「貴重図書」と言います。勿論、非常に高額なものでもあります。しかし、貴重図書の詳細な基準については図書館によって違いがあるのだそうです。本学の図書館でも、貴重図書は、一般資料とは区別して大切に扱っています。約15,000冊の貴重図書を現在所蔵しています。
本学創立100周年を迎える2020年に、本学が所蔵している貴重図書を公開展示する企画があり、準備が進められています。それに先駆けて、12月4日と11日に、近年図書館に登録した貴重資料の特別内覧会がありました。
内覧会で拝見した本学の貴重図書のいくつかを紹介したいと思います。
下の写真の書物には、どんなことが書かれていると思いますか。
美しい色彩で彩られた表紙を開いて中をみると、墨で描かれた絵の余白に文章がぎっしりと詰まっています。これらは、江戸時代、1846年に出版されたもので、今でいう絵本のようなものと言っても良いかもしれません。『釈迦八相倭文庫』(しゃかはっそうやまとぶんこ)のシリーズで、初編から55編の合本27冊が揃っています。内容は、釈迦の生涯を表したもので、誕生して19歳のときに出家し、12年の修行を積んで悟りを開き、人々に教えを諭すまでの過程を描いたものです。他にも、『金色夜叉』の著者として有名な尾崎紅葉直筆の掛け軸をはじめ、紅葉と泉鏡花の印譜(鑑賞や研究を目的として、印章の印影や印款を中心に掲載した書籍のこと)、そして、泉鏡花の初版本33点もあります。また、与謝野晶子の「批評は好悪なり」という論説の自筆原稿もありました。
さて次の写真は、英語の本です。皆さん『不思議の国のアリス』の話はよくご存じだと思いますが、小さな子どもに読み聞かせができるように易しく書き直し、挿絵にも柔らかく色づけしたものが、この“The Nursery Alice”『子供部屋のアリス』です。これは、1889年に出版された、その初版です。他に、イギリスのヴィクトリア時代の有名な小説家、チャールズ・ディケンズ旧蔵の“The Holy Bible” (欽定約聖書)もありました。12月もいよいよ3週目に入り、ディケンズの『クリスマス・キャロル』をもう一度読んでみたくなる時期になりましたね。
さて、最後に紹介するのは、『源氏物語絵帖交屏風』(げんじものがたりえはりまぜびょうぶ)です。『源氏物語』五四帖の桐壺から夢浮橋まで、各帖一場面の絵を選んで貼り付けた六曲一双の金屏風です。屏風に張り付けられた絵の金銀をはじめとした豪華な色使いと、緻密で優美な絵を見ていると、源氏物語の世界に自然と引き込まれていきます。
今回は、それぞれの分野のご専門の先生方に解をもしていただきながら、14の新しいコレクションを見せていただきました。来年度の創立100周年記念の展示はきっと素晴らしいものになるだろうと、期待がますます膨らみました。