管理栄養学科で、「調理学」や「給食経営管理論」などを担当している佐川敦子です。
今年の4年生の卒論テーマは、「アクアガス加熱による殺菌効果の検討」や「ジビエ肉の最適加熱条件の検討」などでしたが、今回は「塩味の感じ方」のテーマについて紹介します。
減塩につながる調味方法としては、食品内部に塩味を拡散させず、食べる直前に食品表面に塩味をつける調味方法があります(同じ食塩量でも表面に塩味をつけたほうが、塩味の感じ方が強くなります)。
塩味にうま味や酸味を添加することで塩味強度が強まるという研究報告は多くありますが、塩味に油を添加した場合の塩味の感じ方についての報告はありません。
そこで実験では、同一塩分濃度下における「飯表面に塩味をつけた試料:炊飯した後に表面に塩をまぶす」と「塩水で炊飯した試料:炊飯前に塩を入れる」を調製し、さらに油を添加(炊飯前・炊飯後)して、同量の食塩量で最も塩味を感じやすい条件について官能評価を行って検討しています。
(いかに少ない食塩量で塩味を感じることができるか!)
市販の「塩むすび」は、炊飯時に炊飯釜からの米離れが良くなるように、油(炊飯油)が使用されています。ヒトの感覚評価(主観的評価)だけではなく、機器測定(米粒の物性測定、形状測定、炊飯時の温度測定、油の香気成分の測定など)の結果もあわせて、検討をします。
実験結果は、炊飯する前に油を添加(評価者は油が入っていることはほとんど感じない程度)する試料の方が、塩味の感じ方が有意に強い結果となりました。また、テクスチャー測定の凝集性(米粒のまとまりやすさ)および付着性(米粒のべたつき)と負の相関があることがわかり、米粒がまとまりすぎる、べたつきやすい試料は、塩味の強度は低下することが示唆された結果となりました。
さらに、添加する油の種類を変えた試料や 冷凍後電子レンジ加熱解凍した試料なども調製して、実施しています。
佐川研究室では、上記のような様々な調理学実験モデルを4年生のゼミ生と考え実施し、卒業論文にまとめています。