今回は、3年生前期「公衆栄養学各論」での特別講義「Perspectives on Japanese foods」についてご紹介したいと思います。特別講義をしていただいたのは、がん研究センター がん対策研究所 予防研究部にお勤めの阿部サラ先生です。ベルリン出身で米国にも長らくお住まいであったサラ先生は、外国人でありながら日本食の健康効果について栄養疫学1)研究を行っています。また、ご趣味でお茶も点てられる日本通の先生です。
諸外国から日本食がどのように注目されているか、栄養疫学者としての視点で講義をしていただきました。
英語と日本語交じりのサラ先生の講義は、アプリを使っての意見収集やクイズなどが盛り込んであり、インタラクティブな講義形式で、とても和やかに行われていました。学生さんの意見を興味深く聴いて回るサラ先生のお姿は、とても気さくで印象的です。
「日本食には、長寿、免疫効果、消化の良さ、皮膚への健康など、多くの健康効果があります。お茶や大豆製品はその種類や食べられ方が日本と西洋では違いますが、他の食品で違う食品がありますか?」とのサラ先生からの質問に、小グループでのディスカッション後、「日本では生で卵が食べられる」「日本では、牛乳に砂糖を入れたりフレーバーを付けたりしない」などの意見が出ました。
普段の講義で質問をしない学生さんが、自身の考えを積極的に述べている姿に、インタラクティブな講義スタイルに、教員として習いたいと思うこと然りでした。
また、サラ先生がお得意の「お茶の健康効果」については、科学専門誌Natureに特集された記事をもとに説明をしてくださいました。お茶のがん治療への可能性、うつ病や認知症予防などメンタルヘルス、気候変動によるお茶の生育や機能性成分の変化、バイオテクノロジーやナノテクノロジーへの応用など、お茶が世界中で様々な角度から研究されていることをご説明いただきました。
学生の感想からは、
「自分の国の食事が健康的でユニークである食文化であることを誇りに思った。」
「日本人の私ですらお抹茶について深く知らずに飲んでいたけれど、思っている以上にお茶には私たちの体にメリットになる点が多く、もっと深く知りたいと感じた。」
「講義全体を通じて、「日本の食べ物は独特で健康だよ」と言ってくれていたことから、普段食べている日本の食べ物をもっと振り返ってみたいなと思いました。」
「There are many possibilities for tea, and I’ve never cared about the relaxing effects of tea that is very familiar to me, so I want to enjoy a cup of tea from now on.」と、英語で感想を書いてくれる学生さんまでいて、英語での講義はとても刺激になったようです。
講義の最後には、“The World is your oyster”「この世はあなたの思いのままである」という言葉を用いて、皆さんがやりたいことは何でもできる、あなたの可能性は無限大と、学生たちにチャレンジする事への力強いエールを送ってくださいました。
今回は、管理栄養学科での講義の一幕をご紹介しました。日本人を取り巻く食・健康の問題は、環境問題や世界情勢の影響を大きく受け、常にグローバルな視野を持って考え、問題解決を図ることが求められます。今回の講義が、学生たちがそのようなグローバルな考えを持つための刺激になったのであれば幸いです。
1)栄養疫学(Nutritional epidemiology)は、栄養・食事を中心的テーマとして取り上げる疫学研究の総称です。 簡単に言えば、『食べている物や食べ方と健康との関連について疫学的手法を用いて明らかする科学』です。