本日は、調理科学の研究を行っている佐川研究室の研究活動を紹介します。
佐川研では、今年度、以下のような研究を行っています。
・大量調理機器の調理加工特性(スチームコンベクションオーブンを用いた加熱の調理加工特性や品質管理に及ぼす変動要因の検討、庫内の熱流動CFD解析)
・調理器具の違いによる品質比較
・家庭内調理の外部化
などの研究テーマで卒業研究を行っています。
今回は、そのうちの調理器具の違いによる品質比較の研究に従事する4年生2名の学会発表についてご報告します。
日本調理科学会2025年度大会
2025年8月30日・31日に、東海学園大学(名古屋キャンパス)で開催された「日本調理科学会2025年度大会」に、佐川研究室の4年生2名が参加しました。
特別企画「多様な調理法と家庭料理の伝承」では、「フライパンの材質の違いが薄焼き卵の物性および官能特性に及ぼす影響」という演題が採択され、発表を行いました。
発表内容
近年、熱伝導性および剥離性を考慮したフライパンが普及していますが、本実験では、異なる材質のフライパンが薄焼き卵の物性および官能特性に及ぼす影響を具体的に明らかにすることを目的としました。4種類のフライパンを用いて、卵液を同条件、同一手順で加熱して薄焼き卵を作り、その重量変化率、水分含有量、色調、気泡径の大きさなど物性および官能評価※を行いました。
その結果、いくつかのことが分かったのですが、最も驚きの結果は、昇温速度の速さによって試料内部の気泡径の大きさや数の分布が異なることでした。官能評価では、ダイアモンドコーティング配合※ノンスティック加工のフライパン※の薄焼き卵は、他のフライパンよりも、有意に好ましいと評価され、これは、表面の凹凸が少なく、焦げ色の程度が低く、やわらかいことが要因であることが考えられました。
初めての学会発表
初めての学会発表で大変緊張しましたが、研究者の方々から専門的な視点に基づいた多くのご質問やご意見をいただき、新たな考察を深めることができました。また、自らの発表に加え、他分野の研究発表を聴講することで、調理科学分野の学術的な広がりや、未解明の現象に対する多様な科学的アプローチを実感しました。研究の奥深さを知ることができたことは、大変貴重な経験となりました。今後もこの経験を糧に、実験や卒業論文の作成に一層励んでいきます。
※官能評価とは、五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)を用いて製品や物質の品質、特性を評価すること
※ノン・スティックフライパンとは、フッ素樹脂(テフロン)やセラミック、チタン、ダイヤモンドコーティングなど、さまざまなコーティング素材が使われた焦げ付きにくいフライパンです。
※ダイヤモンドコーティングとは、フッ素樹脂加工に人工ダイヤモンドの微粒子を混ぜ込んだコーティング技術です